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セメントの種類/用途

 
  一般に「セメント」とは「ポルトランドセメント」を意味し、特に普通ポルトランドセメントを指していることが多いようです。これは、普通ポルトランドセメントの用途範囲が非常に広く、「オールラウンドなセメント」といえることからきています。しかし、そのほかにもセメントの種類は数多く存在し、下表のように、(1)JIS規格に規定された(a)ポルトランドセメント、(b)混合セメント、(c)それ以外のセメント、そして(2)特殊なセメントに大別することができます。
 

(1)「JISに規定されたセメント」の種類

(a)ポルトランドセメント
普通ポルトランドセメント 同・低アルカリ形
早強ポルトランドセメント 同・低アルカリ形
超早強ポルトランドセメント 同・低アルカリ形
中庸熱ポルトランドセメント 同・低アルカリ形
低熱ポルトランドセメント 同・低アルカリ形
耐硫酸塩ポルトランドセメント 同・低アルカリ形

(b)混合セメント
高炉セメント(A、B、C種)
フライアッシュセメント(A、B、C種)
シリカセメント(A、B、C種)

(c)それ以外のセメント
エコセメント 普通、速硬
 

(2)「特殊なセメント」の種類

  ポルトランドセメントをベースにしたもの
膨張性のセメント
2成分系の低発熱セメント
3成分系の低発熱セメント

  ポルトランドセメントの成分や粒度の構成を変えたもの
白色ポルトランドセメント
セメント系固化材
超微粒子セメント
高ビーライト系セメント

  ポルトランドセメントとは異なる成分のもの
超速硬セメント
アルミナセメント
歯科用セメント、りん酸セメントなど
気硬性セメント
 

  普通ポルトランドセメント JIS R 5210


  土木・建築構造物の建設用として、全国どこでも入手できるもっとも汎用性の高いセメントです。また、袋物の入手も容易なことから、小規模工事や左官用モルタルとしても使われています。


特徴
  単にセメントといえば、これを指す最もポピュラーなセメントです。幅広い分野の工事で使用されます。国内で使用されるセメントの約70%がこのセメントです。

用途
  一般建築・土木工事

  早強ポルトランドセメント JIS R 5210


  初期強度の発現性に優れるエーライトCの含有率を高め、水と接触する面積を多くするためにセメント粒子を細かく砕いて、短期間で高い強度を発現するようにしたセメントです。


特徴
  普通ポルトランドセメントが3日で発揮する強さを1日で発揮するセメントです。型枠の脱型を早めるため、早く強度が欲しい時に使用されます。

用途
  緊急工事、寒冷期の工事、コンクリート製品

  超早強ポルトランドセメント JIS R 5210


  早強ポルトランドセメントよりも、さらに短期間で強度を発揮するセメントです。


特徴
  普通ポルトランドセメントが7日で発揮する強さを1日で発揮するセメントです。

用途
  緊急補修

  中庸熱ポルトランドセメント JIS R 5210


  体積の大きな構造物(「大量」の意味をもつ「マス」をつけ、「マスコンクリート」という)の工事用に、水和熱を低くするためにエーライトCアルミネート相Cの含有量を少なくしたセメントです。結果として、ビーライトCの多い組成になっています。


特徴
  普通ポルトランドセメントに比べ、水和熱が低いセメントですが、(1)長期強度に優れる(2)乾燥収縮が小さい(3)硫酸塩に対する抵抗性が大きいなどの特徴があります。

用途
  ダム、大規模な橋脚工事

  低熱ポルトランドセメント JIS R 5210


  中庸熱ポルトランドセメントより水和熱が低いセメントです。ビーライトCの含有率を40%以上と規定しています。


特徴
  材齢初期の圧縮強さは低いセメントですが、長期において強さを発揮する特徴を持ち、コンクリートの低熱性、高強度性および高流動性に対応するセメントです。

用途
  高流動コンクリート

  耐硫酸塩ポルトランドセメント JIS R 5210


  セメント中のアルミネート相Cは、硫酸塩に対する抵抗性が弱いため、その含有量を極力少なくしたセメントです。

特徴
  海水中や温泉地近くの土壌、下水・工場廃水中に含まれることがある、硫酸塩に対する抵抗性を高めたセメントです。

用途
  護岸工事、温泉地付近の工事、化学工場の工事

  低アルカリ形ポルトランドセメント JIS R 5210


  セメント中には、「アルカリ金属」のナトリウム、カリウムの酸化物である「酸化ナトリウムNaO」や「酸化カリウムKO」が含まれています。使用する骨材がアルカリシリカ反応性について「無害」であると判定できない場合には写真のような「アルカリ骨材反応によるひび割れ」が見られる場合があります。その発生を抑制するセメントです。


特徴
  セメント成分中の全アルカリ量を0.6%以下に抑えたセメントで、ポルトランドセメント6種類それぞれに低アルカリ形があります。

用途
  アルカリ骨材反応が起きる可能性がある場合に使用

  混合セメント JIS R 5211〜5213


  ポルトランドセメントのクリンカとせっこうのほかに、各種の混合材を混合してつくったセメントです。JIS規格で定める混合材には、(1)高炉スラグ、(2)フライアッシュ、(3)シリカ質混合材の3種類があり、これらの混合材の名称により、それぞれの混合セメントの名称がつけられています。写真はフライアッシュの顕微鏡写真(×2500)です。


特徴
  混合材の混合比率によってそれぞれA種,B種,C種があります。
用途に応じてそれぞれ所定量の混合材を単独で混合しています。

用途
  建築・土木工事

  高炉セメント JIS R 5211


  高炉スラグ(「水砕スラグ」と呼ばれることもある)は、セメントの水和反応で生じた水酸化カルシウムCa(OH)に刺激されると徐々に水和反応を起こす性質(潜在水硬性といわれる)をもっています。


特徴
  製鉄所から出る高炉スラグの微粉末を混合したセメントです。長期強度の増進が大きく、耐海水性や化学抵抗性に優れています。「ゆっくり固まる」セメントであるため、とくに初期の養生を入念に行う必要があります。

用途
  ダム、港湾などの大型土木工事

  フライアッシュセメント JIS R5213


  フライアッシュ自体は、水和反応しませんが、含まれている二酸化けい素SiOが、セメントの水和反応によって生じた水酸化カルシウムCa(OH)と反応して水和物(けい酸カルシウム水和物)を生成します(この反応を「ポゾラン反応」といいます)。この水和物は緻密で耐久性に優れています。


特徴
  主に火力発電所で石炭の燃焼時に発生するフライアッシュ(微粉状の石炭灰)のなかで良質なものを混合したセメントです。良質なフライアッシュは球形なのでコンクリートのワーカビリティが向上します。

用途
  ダムや港湾などの大型土木工事や水密性を要求される構造物

  シリカセメント JIS R 5212


  天然のシリカ質混合材を混合したセメントです。シリカ質混合材は、二酸化けい素SiOを60%以上含んでいるポゾラン反応しやすい(「活性」があるという)物質を指します。


特徴
  耐薬品性に優れていますが、初期強度が低く強度発揮に時間がかかります。

用途
  主にコンクリート製品 など

  エコセメント JIS R 5214


  廃棄物問題の解決を目指して開発されたセメントで、都市ごみ焼却灰や下水汚泥を主原料としており、2001年には千葉県市原市に世界初の工場が完成し生産を開始しました。また、2002年7月にJIS R 5214として規格化されました。


特徴
  原料となる廃棄物の影響により、ポルトランドセメントより少し多い塩素が含まれていますが、最近では脱塩素技術が進歩し、より通常のセメントに近いものも開発されています。

用途
  鉄筋を使わないコンクリート分野

  膨張性のセメント


  大気中にあるコンクリートは、乾燥すると収縮します。内部の鉄筋や構造物の形、部位によっては自由に収縮できないと「ひび割れ」の原因となります。また、重い機械の基礎などのように、同一の箇所に長時間大きな荷重がかかると、復元しない変形(「クリープ変形」という)が生じることがあります。このようなひび割れや変形を防止するために、セメントに、膨張材を加えたものが膨張性のセメントです。


特徴
  膨張材には、「カルシウムサルフォアルミネート(CSAと略称される)系」のものと、「生石灰系」の2種類があります。いずれの膨張材も混合量が多過ぎると弊害が生じることがあるため、混合量を適切に設定する必要があります。

用途
  トンネル工事(裏込めやグラウト工事)

  2成分、3成分系の低発熱セメント


  工事の条件などによって混合材の種類、混合量を指定してつくる特別なセメントで、混合材が1種類の場合を「2成分系」、2種類の場合を「3成分系」と称しています。これらのセメントは注文により生産されるので、1箇所で大量に使用する工事などに使われます。

特徴
  低発熱を目的に、普通ポルトランドや中庸熱ポルトランドセメントをベースに高炉スラグ、フライアッシュなどの混合材をそれぞれ指定された量を混合したセメントです。

用途
  ダムや大型橋脚など大量のコンクリートを打つ工事

  白色ポルトランドセメント


  ポルトランドセメントの色は、独特の灰色をしています。これは、着色成分といえる酸化第二鉄Feを含んでいることによります。白色ポルトランドセメントは、顔料等を加えて任意に着色しやすいように白色とするため、この酸化第二鉄Feをできる限り含まないようにしたものです。

特徴
  ポルトランドセメントに含まれる着色成分をできる限り抑えて、白色にしたセメントです。

用途
  各種建造物の表面仕上げ用モルタルや装飾材料に使用。
また、顔料を加えてカラーセメントを造る時のベースとして使用。

  セメント系固化材


  セメント系固化材は、「土あるいはこれに類するもの」を固めることを目的に、ポルトランドセメントの成分、粒度の構成を変更し、土質に応じてさらに有効成分を添加したもので「ジオセメント」ともいわれています。写真のように高層ビルの基礎地盤改良にも使用されています。


特徴
  軟弱地盤を改良するため土を固めたり、ヘドロや建設発生土を良質な土に変えるために土に混合して使用するセメントです。対象となる土に応じて成分調整されています。粉体またはスラリー状で使用されています。

用途
  水を多量に含む軟弱地盤の改良、有機質土壌の安定化、川や池の底にたまるヘドロの固化処理、下水汚泥の固化など

  超微粒子セメント


  通常のセメントより、さらに微粒子になるよう粉砕したものです。用途により成分を変えてつくられています。


特徴
  トンネル工事において岩盤から流出する地下水を止める(止水といいます)場合には、短時間で硬化するように成分を調整したものが用いられます。油井、地熱井などの掘削に用いる場合には、高温高圧環境下の使用となるため、反応速度が遅く、長期間粘性を低く保持できるような成分調整を行ないます。

用途
  トンネル工事の止水や、石油掘削用の油井や地熱発電用の地熱井工事

  高ビーライト系セメント


  低発熱用セメントとして、セメント成分のうち発熱の大きいアルミネート相Cをできる限り抑え、水和熱の小さなビーライトCが主成分となるよう調整したセメントです。


特徴
  低発熱用セメントとして、流動性の良いコンクリートをつくりやすい特性があります。工事の合理化と水和熱抑制を目的とした工事に使用されます。

用途
  大型構造物

  超速硬セメント


  ポルトランドセメントの成分と類似のもので構成されています。凝結・硬化が速いため、凝結を遅延させる「制御材」を添加して硬化までの作業時間を適切に設定して使用します。

特徴
  2〜3時間の短期間で10N/mm2以上の圧縮強度を発揮するセメントです。凝結・硬化時間が速く作業時間に応じて制御材を添加します。

用途
  緊急工事、トンネルなどの吹付けコンクリート、グラウト材

  アルミナセメント


  アルミニウムの原料である「ボーキサイト」と石灰石からつくられたセメントです。

特徴
  練混ぜ後6〜12時間でおおむね普通ポルトランドセメントの材齢28日の強さを発揮します。また、耐火性、耐酸性にも優れています。

用途
  緊急工事、寒冷地での工事や耐火物、化学工場での建設工事

  その他のセメント


  歯科用セメントの「りん酸亜鉛セメント」や医療用セメントの「りん酸カルシウムセメント」などがあります。

特徴
  生体に対して為害性がなく、数分で硬化するなどの特徴があります。

用途
  歯の治療用や医療用

  気硬性セメント


  消石灰、せっこう、マグネシアセメント(焼成した酸化マグネシウムに「にがり」を加えて硬化させる。急硬性で、水や熱に弱い)も「気硬性セメント」としてセメントの一種とされることがあります。


特徴
  ポルトランドセメントのように水中で硬化する水硬性セメントに対して、気硬性セメントは空気中で硬化します。気硬性セメントは耐水性がなく、適用場所が限定されます。

用途
  建築工事など

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