コンクリート舗装の長所


コンクリート舗装の今日的なメリットとはどのようなものでしょうか?

 わが国社会資本の維持管理・更新を取り巻く社会経済情勢から、構造物の長寿命化計画の策定によるライフサイクルコストの縮減を始め、社会資本の戦略的な維持等が大きな課題となっています(例えば社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会技術部会「今後の社会資本の維持管理・更新のあり方について中間答申(案)」平成25年6月)。また、舗装に関しても、地球温暖化対策等の環境問題を避けて通るわけには行きません。

 それら課題の解決のためには、コンクリート舗装の長所を十分生かして活用することが必要であると考えられます。


@ コンクリート舗装は、ライフサイクルコスト(生涯費用:初期コスト+維持管理コスト)がアスファルト舗装に比べて低廉です。
 
A コンクリート舗装は、耐久性が極めて高く長寿命であり、打換えの頻度が低減でき、打換えに伴う環境負荷の軽減や維持管理が合理化できます。
 
B コンクリート舗装は、大型車の燃費向上に効果があります。これは、道路からの二酸化炭素排出量の削減に貢献します。
 
C コンクリート舗装は、アスファルト舗装に比べて最大で10℃程度の路面温度低減効果があります。これは、都市のヒートアイランド対策に寄与します。
 
D コンクリート舗装の主たる材料であるセメントは、国産材料から生産されています。このことは、資源の安定供給確保の面からも重要です。
 

リストポイント  ライフサイクルコスト(LCC)が優位

リストポイント  大型車の燃費向上に効果

リストポイント  ヒートアイランド対策に寄与



コンクリート舗装は寿命が長いと聞きますが、どの程度の寿命が期待できるのでしょうか?

 コンクリート舗装の供用寿命については、これまでの調査により、次のようなデータが得られています。


@ セメント協会が刊行した「リストポイント  舗装技術専門委員会報告 R-24 既存コンクリート舗装のライフサイクルコスト調査結果(2009年1月)」によれば、一般国道(指定区間)において調査されたコンクリート舗装の供用後経過年数は約40年程度で、最大で70年程度の事例もありました。また、コンクリート舗装のひび割れ度等の状況から、なお構造的健全性を保っている状態にありました。
 
A 欧米諸国では、コンクリート舗装に用いられる設計耐用年数は、一般的に少なくとも30年であり、オランダでは40年が一般的であるとされています「リストポイント  Long-Life Concrete Pavements in Europe and Canada"; FHWA 、 2007年8月」。また、設計耐用年数40〜50年といった、より長寿命化を目指して研究開発が進められています。
 
B なお、2001年6月に国土交通省から「舗装の構造に関する技術基準」が通達され、舗装の性能規定が導入されたことによって、従来、コンクリート舗装20年、アスファルト舗装10年とされていた設計期間について、自由に設定できるようになっています。
 


コンクリート舗装はライフサイクルコスト(生涯費用)が低廉であると聞きますが、具体的なデータで裏付けされたものなのでしょうか?

 セメント協会では、日本道路協会舗装委員会と共同でコンクリート舗装の現地調査を実施し、調査結果と路面性状データ・補修履歴データから、現存するコンクリート舗装の実ライフサイクルコストの算定を行いました。その結果は、セメント協会刊行の「リストポイント  舗装技術専門委員会報告 R-24 既存コンクリート舗装のライフサイクルコスト調査結果(2009年1月)」に取りまとめられました。


 この報告書によれば、舗装の新設費用(初期コスト)は、密粒度アスファルト舗装がコンクリート舗装より2割程度安価ですが、一度でも補修が行われると逆転し、結果として総費用(ライフサイクルコスト:LCC)は、コンクリート舗装より2割程度高価となるという結果が得られています。

 またこの内容は、日本道路協会が2009年8月に刊行した「リストポイント  コンクリート舗装に関する技術資料」にも記述されています。


 また、国土交通省道路局が土木研究所と共同で作成した技術資料「道路舗装の長寿命化に向けて〜コンクリート舗装の特長を活かした活用がカギ〜」では、直轄国道におけるコンクリート舗装とアスファルト舗装のLCC比較事例が掲載されていますが、コンクリート舗装がLCCに優れていることが示されています。


 このように、コンクリート舗装はアスファルト舗装に比べ、ライフサイクルコストで優位にあり、新設費用(初期コスト)だけでコストを比較することは、結果的に不経済となります。






コンクリート舗装はヒートアイランド対策に効果があるのでしょうか?

 ヒートアイランド現象の原因や影響については未解明な部分がありますが、真夏のアスファルト舗装道路の路面温度は60℃を超えるため、舗装など地面の被覆増大がヒートアイランド現象の原因のひとつであるとされています。

 このようなアスファルト舗装路面の温度を低下させる方法として、保水性舗装や遮熱性舗装等の様々な環境舗装技術が開発されています。

 コンクリート舗装は、アスファルト舗装に比べて最大10℃程度の温度低減効果が得られます。コンクリート舗装はその「明色性」により温度低減効果を発揮するために、他の環境舗装技術に比べて特別な施工が不要であり、かつ効果が持続します。

 これらのことから、コンクリート舗装は夏季における都市内のヒートアイランド対策に一定の効果が期待されます。


 ノーベル物理学賞受賞者でアメリカ合衆国エネルギー省前長官のスティーブン・チュー(StevenChu)氏は、世界中の道路や屋根を白っぽい色に変えることで、実に地球上から11年間すべての自動車が消えるのと同じ効果が得られると語ったと報道されました(例えば、'The Independent'、 2009/5/27<英> Obama's climate guru: Paint your roof white!)


リストポイント  Obama's climate guru: Paint your roof white!



舗装の種類によって自動車の燃費が異なることがあるのでしょうか?

 カナダの国立研究機関 National Research Council of Canadaは、気候変動に関するカナダ政府のアクションプラン2000において調査を実施し、大型車の走行時の燃費に関する最終レポートを2006年1月に報告しました。そのレポートにおいて、「コンクリート舗装はアスファルト舗装に比べて、大型車の燃費が0.8〜6.9%優れる。」と報告されています。

 (一社)セメント協会でも、大型車の走行抵抗と舗装路面種別との関係に関する調査を実施し、「コンクリート舗装はアスファルト舗装に比べて、大型車の燃費が 0.8〜4.8%優れる。」という結果を得ました。


 平たん性や縦断こう配といった道路の基本的な条件が同一であれば、アスファルト舗装よりもコンクリート舗装の方が転がり抵抗が小さく、その結果として燃費がよい。これは、自動車の輪荷重が路面に作用したときに、アスファルト舗装は大きくたわみ、転がり抵抗が大きくなるためと考えられています。


 自動車の燃費が改善されることは、地球環境問題で懸案となっている二酸化炭素の排出削減に効果があります。コンクリート舗装を採用することにより、地球環境問題に貢献できることになります。




舗装の原材料は今後も安定的に供給されるのでしょうか?

 2008年9月のリーマンショックを契機とする世界同時不況により、石油製品の需要が減退したことから、石油精製会社が精製設備の稼働率を下げていることや、重質油熱分解装置の導入によって石油製品がより軽質化する傾向にあることから、アスファルトの供給は今後とも全国的に逼迫するとされています。アスファルトは石油の副生産物であることから、アスファルト合材の供給は石油の供給や景気の状況等に左右され、今後も安定的な供給が保証されているとは言えません。


 これに対して、セメントは副生産物ではなく、また国産材料から生産される数少ない材料であることから、今後も安定的な供給が期待でき、また価格も比較的安定しています。

 さらにセメントは、地域の建設残土や下水汚泥といった廃棄物・副産物を活用して生産されています。廃棄物・副産物の利用は、地域の廃棄物の処理に有効であるばかりでなく、廃棄物の最終処分場不足の緩和にも大きく貢献していることを忘れてはなりません。



リストポイント  セメント製造における廃棄物・副産物の利用