協会長年頭ご挨拶


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一般社団法人セメント協会

会長 小野直樹

 皆様、明けましておめでとうございます。セメント協会長の小野です。
 2022年の年頭に当たり、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。
 今年も新型コロナウイルスの影響を考慮し、誠に残念ながら、賀詞交歓会を中止とせざるを得なかったため、ビデオメッセージでのご挨拶とさせていただきます。
 皆様にはセメント業界に対し、日頃よりご支援、ご協力を賜り、心より厚く御礼申し上げますとともに、ご家族お揃いで健やかにこの新年を迎えられたものとお慶び申し上げます。

 さて、昨年を振り返りますと、やはり新型コロナウイルスによる経済面、社会面、生活面への大きな影響が続いた、ということに尽きるかと思います。
 その中にあって、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、一方、菅内閣の総辞職と岸田内閣の発足、続く衆議院解散・総選挙等、大きな出来事が続いた年でもありました。
 また、東日本大震災から10年の節目を迎え、生命(いのち)の大切さ、防災活動の重要性を改めて考えた年でもあったかと思います。
 日本経済については、全体としては回復過程にはあるものの、現状では、未だ本格的な回復は見通せない状況に置かれているものと思います。

 翻りまして、このような国内情勢の中、2021年度のセメント内需は、当初3900万トンを見込んでおりましたが、上半期は前年を若干下回るという厳しい結果となりました。
 しかしながら、こうした状況下にあっても我々は日々、国民の生命(せいめい)や財産を守るインフラ構造物に不可欠な基礎素材であるセメントの安定供給に務め、一方では、廃棄物・副産物の有効活用、災害廃棄物の処理を通じて、我が国の社会経済を支えることに尽力してまいりました。
 今後ともその社会的責務を果たしていく所存です。

 さて、この年頭に当たり、本年、セメント業界が引き続き取り組むべき課題として、3点申し上げたいと思います。

 まず1つ目は、最大の課題である、2050年カーボンニュートラル実現への取り組みです。
 脱炭素社会の構築が世界の潮流となる中で、セメント業界では経団連が提唱する環境自主行動計画や低炭素社会実行計画に参画し、セメント製造用のエネルギー原単位の削減に取り組んでまいりました。
 その結果、環境自主行動計画では目標を上回り、低炭素社会実行計画でも2018年に引き上げた目標をすでに達成し、昨年にはその目標をさらに大きく引き上げたところです。

 また、経団連が温暖化対策の長期ビジョン策定を提起するなかで、セメント業界では2020年に取りまとめた「脱炭素社会を目指すセメント業界の長期ビジョン」を改訂すべく、2021年度内の公表を目指し鋭意作業を取り進めております。
 セメント産業においては、エネルギー起源だけではなく、生産プロセスに由来する二酸化炭素が発生するため、他産業と比較して、カーボンニュートラルへの道のりはハードルが高く、困難を伴います。
 しかしながら、カーボンニュートラル実現への取り組みは、地球規模での環境問題解決に貢献するチャンスでもあり、継続的に省エネ投資等に取り組むとともに、二酸化炭素の回収・再利用技術など、イノベーションの推進に向けた取り組みを既にスタートさせております。
 今後とも、セメント業界の持続的な発展のため、関係官庁をはじめとする関係各位のお力添えをいただきながら、カーボンニュートラル実現に向けた研究開発に最大限の努力を続けていく所存です。

 一方、セメント業界は多種多様な廃棄物・副産物を外部から受け入れ、生産原料、熱エネルギーの代替として利用しています。
 また、近年多発する地震や豪雨災害で発生した災害廃棄物についても、各自治体との緊密な協力体制の下で、安定した受入処理を継続しているところです。
 この取組みは、二酸化炭素削減を目指す対策にも通じるものであり、今後とも関係者全てが、セメント業界に課せられた社会的責任と認識し、発展・深化させていく必要があると考えております。

 2つ目が、新しい需要開拓への取組みです。
 内需が長期的には減少傾向となる中、将来のセメント産業の持続的発展のために、大変重要な課題であると考えております。
 具体的な需要開拓の取組みとしては、まず、コンクリート舗装の普及が挙げられます。
 コンクリート舗装はライフサイクルコストの面で優位性があり、加えて脱炭素にも有効で環境負荷軽減の効果も大きいと評価されておりますが、これまで、交通開放に時間がかかることなどから、普及が十分に進んでいない状況でありました。
 その対策として、セメント協会では、1日で交通開放可能な「1DAY PAVE」を開発し、その普及数については、昨年までで570件を超える実績となっております。
 3月には現在策定中の普及プログラムがまとまる見込みであり、全国各地におけるコンクリート舗装へのご理解が一層浸透していくよう努めていくこととしております。
 次に、セメント系固化材や補修材の普及拡大が挙げられます。
 セメント系固化材は軟弱地盤対策のみならず、地震後の液状化や洪水被害などに対する防災・減災などにも使用されるようになっており、また補修材は近年問題となっているインフラ老朽化対策として、社会に果たす役割が大きくなってきております。
 これら固化材・補修材の普及拡大についても、業界を挙げて一層の努力をかさねてまいる所存です。

 3つ目が、これらセメント業界の取り組みについての国民の皆様への理解浸透です。
 現状、セメント業界の取り組みは、残念ながら社会一般の皆様方へ十分に浸透しているとは言い難い状況であります。
 今後、アフターコロナの状況も見据えた上で、様々なメディアにもご協力いただきながら、幅広い方面に向けて、繰り返しセメント産業の社会的、経済的意義を訴えていくことが大切と考えております。
 様々な取り組みの発信について工夫を取り入れ、国民の皆様に私たちの取り組みを理解いただける活動を継続してまいります。

 昨年秋には、ワクチン接種の拡大に伴い、感染が一定の落ち着きを見せましたが、一方で、昨年末からはオミクロン株の拡大が見られるなど、まだまだ新型コロナウイルスの収束に至る道筋は遠いものと推測されます。
 こうした中にあっても、セメント業界は今後とも、社会的使命として、セメントの安定供給に努め、また、地球規模での環境課題であるカーボンニュートラルへの取り組みも全力で推進してまいります。

 最後となりますが、この年頭に当たり、セメント業界に対する関係者の皆様の一層のご理解とご協力をお願い申し上げ、また本年が皆様にとって良い年でありますことを心よりお祈り申し上げまして、私の新年のご挨拶とさせていただきます。