年頭ご挨拶


一般社団法人セメント協会 会長
不死原 正文

  皆様、新年あけましておめでとうございます。

  まず、2023年の年頭に当たり、一言ご挨拶を申し上げます。
皆様にはセメント業界に対し、日頃より多大なるご支援・ご協力を賜り、心より厚くお礼申し上げます。

  さて、新型コロナが社会的に問題となってから3年余りが経ちました。最近では世界的に落ち着きを見せつつあり、経済全体も回復基調が現れているものの、なお予断を許さない状況は変わらず、社会や経済への影響はまだ終息したとは決していえない状況であり、わが業界においても、まだまだ改善したとはいえないものと考えております。

  そうした中、セメントの内需につきましては、2022年度上半期についてはほぼ前年と同じでありましたが、カーボンニュートラルへの対応の流れが強まる中、ロシアのウクライナへの侵攻が資源価格の高騰に拍車をかけ、当業界を取り巻く環境はより一層厳しいものとなりました。当面こうした状況は継続するものと考えられ、会員各社においても様々な取り組みがなされていますが、本年は従前にも増して気を引き締めなければならないと実感しているところであります。

  このような厳しい状況ではありますが、私たちセメント業界はインフラ構造物に不可欠な基礎素材であるセメントの安定供給のために、安全・品質管理を徹底しながら生産基盤を維持し、今後とも社会的責務を果たしていくことの決意については今後とも変わりはありません。

  こうした認識に立って、ここでセメント業界が取り組むいくつかの課題を申しあげたいと思います。

  まず、従前と同じでありますが、2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みです。セメント業界は経団連が提唱する環境自主行動計画や低炭素社会実行計画に当初より参画し、セメント製造用のエネルギー原単位の削減に取り組み、順次目標を達成して参りました。

  しかしセメント産業は生産プロセスの構造上、他産業に比べてカーボンニュートラルの実現は容易なものではありません。昨年3月の「長期ビジョン」に沿って省エネルギーの推進や廃棄物の利用拡大、さらに回収、再生利用などをこれまで以上強力に取り組んでいく所存です。ただ実用レベルに達するには長期間に亘る息の長い取り組みが求められます。そのための体力を残しておかなければなりません。改めてグリーンイノベーション基金をはじめとした国からのご支援ご協力に深く感謝申し上げ、カーボンニュートラルを最重要課題として、これへの対応が業界の存続基盤に関わるとの認識をもって、業界の英知を結集しつつ対応を進めてまいります。

  またセメント業界では廃棄物・副産物を外部から受け入れて原料や熱エネルギーの代替として利用し、2次廃棄物を出しておりません。その受入量は2021年度では2629万トンに及びました。加えてセメント協会では「災害廃棄物処理支援ネットワーク」に参加しておりますが、近年多発する地震や豪雨災害で発生した災害廃棄物の受入れを積極的に行い、今後とも循環型社会の実現に貢献していく所存です。

  一方、内需が長期的に減少傾向にある中、新しい需要開拓への取り組みについても大変重要な課題であり、コンクリート舗装の普及にこれまで以上に注力してまいります。

  コンクリート舗装は耐久性が高くライフサイクルコストの面で優位であり、脱炭素にも有効であると評価されていまして、更なる普及をめざして昨年度に「コンクリート舗装の普及推進のための3か年行動計画」を取りまとめ、国や地方自治体やNEXCO等の関係各位に対し、コンクリート舗装の長所をより一層ご理解いただくべく活動を開始しております。その一環としまして徐々に実績を挙げている1DAY PAVEの普及にも一層注力して参ります。

  もう一つ需要拡大への取組として、徐々に需要の伸びているセメント系固化材の更なる普及拡大にも引き続き取り組んでまいります。固化材は近年地盤改良にとどまらず、地震の際の液状化や洪水被害に対する防災・減災にも使用されるようになってきております。例えば河川堤防の強化への使用についても大学との共同研究を進めており、国土強靭化対策に大いに貢献して参りたいと考えております。

  セメント業界の各般の取組と魅力を国民各層の皆様へ理解していただくことも重要です。これまでの週刊誌やセミナーといった形式に加えて、特にこれからの時代を担う若い世代にアピールできるような新しいメディアを駆使した広報などを全方位に展開してまいります。

  以上要点を申し述べましたが、現状を打開し将来への課題を効果的に実現していくには、業界の内部の努力はもちろん、関係の皆様に幅広くご理解とご協力をいただくことが益々必要になります。

  皆様におかれましてもセメント業界に対してこれまで以上にご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

  本年が皆様にとって良い年でありますよう、干支であるウサギのように飛躍できる年でありますよう、心よりお祈り申し上げ、私の新年の挨拶とさせていただきます。

以上