小樽港北防波堤の整備開始は1897(明治30)年にさかのぼる。港は、明治初期に道央の石炭の積出港として地位を確立したが、外海に直接面しており、 わずかな波浪でも船舶停泊や荷役に影響を受け、特に冬の激波時には、陸上の家屋にまでその被害が拡大、その対策として我国初の本格的外洋防波堤建設が始動 した。この事業を陣頭指揮したのが小樽築港事務所初代長の廣井 勇博士。当時、スリランカのコロンボ港等で実績のあったコンクリートブロックを斜め積みす る「斜塊式混成堤」が採用された現場では、施工と並行して様々な海外文献の調査研究と追加試験が積み重ねられた。
その中でも特に有名なのが、数万個におよび現在も続くモルタルブリケットによる長期耐久性試験やコンクリートの耐海水性向上と工費節減のための火山灰の 使用であり、これらの業績は今日の土木工学発展の礎として燦然と輝いている。