水を治める、エネルギーに変える

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本庄水源地(広島県呉市)

本庄水源地は、旧日本海軍が各地に造った鎮守府施設の一つであり、1890(明治23)年に完成、呉港に寄港する日清・日露戦争で出陣した軍艦の飲料水を賄った。当初の施設は、現在の水源地より下流の河川に石積みをモルタルで固めた程度のものだったが、その後の用水の増加に伴い1918(大正7)年に完成させたのがこのダム。
 着工から完成まで7年を要したこの重力式コンクリートダムの規模は、切石積みコンクリートえん堤、高さ25.2m、長さ97m、有効貯水量200万m3で当時東洋一と謳われた。堤体表面に花崗岩が配し重厚さを際立たせたその表情は、周辺環境と調和し一流の土木遺産として評価が高く1999年、現在稼動中の水道施設として日本初の国重要文化財指定を受けた。太平洋戦争時には戦艦長門、大和に供給された水も現在は、市民の日々の営みに欠かせない水甕となり、その周辺は桜の名所として賑わいを見せる憩いの場となっている。

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