セメント系固化材は、土あるいはこれに類するものを固化することを目的に、セメントの特定成分や粒度の調整をした特殊なセメントです。セメント系固化材の代表的なものとしては、改良対象の土質に対応した汎用固化材(特殊土用固化材ならびに一般軟弱土用固化材)や高有機質土用固化材があり、 また、使用環境に対応した発塵抑制型固化材等があります。
セメント系固化材の位置付け
セメント系固化材は、対象土や使用する環境等に応じて、汎用固化材、高有機質土用固化材、発塵抑制型固化材に大別されます。汎用固化材とは、特殊土用固化材と一般軟弱土用固化材を総称したものであり、砂質土やシルト、 粘性土、 火山灰質粘性土等の軟弱地盤に対して幅広く使用される固化材です。セメント協会では固化後に六価クロムが溶出しやすい土を「特殊土」と定義しており、改良土からの六価クロム溶出を抑制する効果のある固化材として、特殊土用固化材が開発され、今では広く使用されるようになっています。高有機質土用固化材は、汎用固化材では固化しにくい腐植土や有機質土、泥土等の有機物含有量が多い土の固化に適しています。発塵抑制型固化材は、 固化性能や施工性を損なわずに、特殊な加工を施すことにより発塵および飛散を抑制した固化材です。施工時の作業環境の改善に加えて、周辺環境への影響を抑止できることから、市街地や農業地域に近接した改良工事にも適しています。
主なセメント系固化材の種類と特徴
原位置混合工法の施工機械と改良深度
軟弱な地盤の地表から2~3mまでを対象として原位置で改良する工法です。
浅層改良
地盤表面から概ね10m以内を対象として原位置で改良する工法です。
中層改良
地盤表面から概ね10m以上の深い部分までを対象として原位置で改良する工法です。
深層改良
擁壁基礎地盤の改良
ボックスカルバート基礎地盤の改良
管きょ基礎地盤の改良
ケーソン基礎地盤の改良
路床・路盤の改良
盛土のすべり防止
盛土安定のための改良
河川護岸の強化
戸建住宅の浅層改良
中規模建築物の深層改良
格子式地盤改良の液状化対策
仮設道路の改良
重機足場の改良
掘削底盤の強化のための改良
流動化処理土による地下空間の埋戻し
地下鉄のインバート材
浚渫土の有効利用
a.目的外使用の制限
セメント系固化材をモルタル・コンクリート等に用いると要求される強度、耐久性を満たさない可能性があるため、絶対に使用しないでください。セメント系固化材は、地盤改良用途として使用してください。
b.品種の選定
セメント系固化材は、「汎用固化材(特殊土用、一般軟弱土用)」や「高有機質土用固化材」等の用途別、「発塵抑制型固化材」等の機能別に品種が準備されています。品種ごとの用途範囲外で使用すると固化不良や膨張を起こす恐れがあるので、使用に際しては固化対象土や現場環境に適合したものを選定することが重要です。セメント系固化材は、用途に合わせた品種を選定することで十分な効果が発揮されます。
c. 六価クロムの溶出量の確認
セメント系固化材には、ごく微量のクロム化合物が含まれており、これを用いた改良土からは土壌環境基準値を超える六価クロムが溶出する場合があります。
そのため、国土交通省等の「セメント及びセメント系固化材の地盤改良への使用及び改良土の再利用に関する当面の措置について」、「セメント及びセメント系固化材を使用した改良土の六価クロム溶出試験要領(案)の一部変更について」等の通達に準拠し、必要に応じて事前に溶出試験を実施し、六価クロム溶出量が土壌環境基準値を超えないことを確認して使用してください。
セメント系固化材は、紙袋(25 kg 袋)、1 t フレキシブルコンテナバッグ(フレコン)あるいはバラ(ローリー車)の荷姿があるので、施工規模、使用方法等の現場条件に合ったものを選択してください。なお、品種や地域によっては、荷姿が限定されるものがあるので、セメントメーカーに確認して施工計画を立ててください。
セメント系固化材の貯蔵は、通常のセメントと同様に水分や湿気にご注意ください。施工現場において、25 kg 袋やフレキシブルコンテナの固化材を貯蔵する場合は、パレット等のうえに置き、地面に直接置くことを避けてください。また、降雨のおそれがある場合や湿度が高い場合には、ビニールシート等で覆ってください。
a.散布
セメント系固化材の散布にあたっては、均一な散布を行うこと、および所定量を正確に散布することが重要です。
また、住宅等に隣接する工事現場で、粉体の飛散に留意すべき場合には、発塵抑制型固化材あるいはスラリー添加による施工を採用する方法があります。
b.混合
セメント系固化材と対象土の混合撹拌の程度は、改良の効果に大きな影響を与えます。固化材と対象土との混合撹拌が不良の場合や固化材を過剰に添加した場合には膨張を起こす可能性があります。混合撹拌の程度は、土質性状・施工機械の能力および固化材の添加方法等によって異なりますが、所定の添加量で固化材と改良対象土の色むらがなくなる程度まで均一に混合撹拌することで最適の効果が得られます。
c.残材の廃棄
使用後のフレキシブルコンテナ、25 kg 袋、および現場で余った固化材や固化材スラリーを処分する場合は、産業廃棄物となるため、排出事業者が法律に基づいた処分をしてください。
d.フレキシブルコンテナの取扱い
フレキシブルコンテナは重量物であるため、下図のように安全管理によく配慮して取り扱ってください。とくに移動にあたっては,片掛け、二個吊り等を避け、重機でしっかりと吊り上げてください。フレキシブルコンテナには、ワンウェイタイプ(1 回使用)とランニングタイプ(繰り返し使用)があります。ランニングタイプは繰り返し使用するため丁寧に取り扱ってください。
フレキシブルコンテナの取り扱い方法
各メーカーより、「安全データシート(SDS)」が提出されているので、使用前には必ずお読みください。
水と接触すると水酸化カルシウムを生じ、強いアルカリ性(pH 12~13)を呈し、目・鼻・皮膚に対し刺激性があります。また、ごく微量のクロム化合物が含まれており、六価クロムに対して過敏である場合にはアレルギーが起こる可能性があります。したがって、適切な保護具(手袋、長靴、保護メガネ、防塵マスク等)を着用してください。
また、2014 年には労働安全衛生法が改正(2016年施行)され、セメント系固化材を製造・取り扱う場合にリスクアセスメントを実施することが義務付けられました。施工者は施工環境を考慮して、リスクアセスメントを実施し施工を行ってください。