コンクリート舗装の適用


舗装アセットマネジメントを運用する場合の、舗装種別の選択の考え方について教えて下さい。

 自治体においては厳しい財政的制約の下、限られた予算で道路の管理水準を確保するため、舗装の効率的・効果的な維持管理を実施する必要性に迫られており、舗装の分野でもアセットマネジメント手法の適用が図られてきています。

 しかし、アセットマネジメントの構築と運用に取り組んでいる多くの自治体においても、舗装に関してはアスファルト舗装を前提に、どのように補修サイクルを回していくのが合理的かに関心を置いているのが実情です。更新時に長寿命化が図れ、かつLCCに優れるコンクリート舗装を有効に活用することによって、更に効果的にアセットマネジメントが機能し得ることを見落としがちになっています。


 コンクリート舗装の活用については、アスファルト舗装の補修計画において、切削オーバーレイではなく打換えが選択される際に、その代替として長寿命でLCCに優れるコンクリート舗装を採用することで、その時点からの管理コストを縮減するのに大きく貢献します。更に、幹線道路におけるコンクリート舗装の初期コストは、アスファルト舗装のそれと差が少なくなってきていることから、全体経費の削減効果は大きなものになります。



コンクリート舗装は初期コストが高いのではないかと懸念されます。アスファルト舗装との初期コスト差はどの程度か教えて下さい。

 国土交通省関東地方整備局が平成23年度に実施した直轄国道の試算事例(同一の交通条件、地盤条件、埼玉県単価を使用)では、平成18年度において1m2あたり約2,000円あったコンクリート舗装とアスファルト舗装の価格差が、ストレートアスファルトの高騰等により平成23年度には約700円まで縮まってきています(コンクリート舗装9,700円/m2に対して、アスファルト舗装9,000円/m2)。(国土交通省道路局が土木研究所と共同で作成した技術資料「道路舗装の長寿命化に向けて〜コンクリート舗装の特長を活かした活用がカギ〜」から)

 従来からライフサイクルコスト(LCC)の面でコンクリート舗装が優位でしたが、初期コスト差が小さくなったことから、コンクリート舗装のLCCの優位性が更に増しています。


 都道府県道や市町村道のような比較的交通量の少ない道路(交通量区分でN3-N5)では、舗装版厚の関係でなお若干の価格差があるようです。しかしながら、物価版により現状の単価・歩掛りを使用して初期コストを計算すると、比較的交通量の少ない道路(N3-N5交通)でも、アスファルト舗装は2回切削オーバーレイ等を実施すると、コンクリート舗装のコストを上回るという結果が得られます。


LCCの比較(N5交通)関東地区での試算例





コンクリート舗装の活用により維持管理費用の削減が可能でしょうか。削減が可能ならば、どれ程度見込めるのか教えて下さい。

  コンクリート舗装は基本的には20〜30年間はメンテナンスフリーであり、通常は目地部の簡単な維持等、日常的管理で足ります。

  ライフサイクルコストについては、直轄国道のような幹線道路区間では、「アスファルト舗装は一度でも切削オーバーレイ等を実施するとコンクリート舗装のコストを超す」というような実態調査結果が得られています(日本道路協会刊行;コンクリート舗装に関する技術資料)。したがって、一度、舗装の種別をコンクリート舗装とすれば、維持・修繕費の大幅な縮減が可能となります。アスファルト舗装区間に関して打換えが必要となる時期に、その代替としてコンクリート舗装を採用すれば、基本的には20〜30年間はメンテナンスフリーになることから、将来の維持管理費の縮減が可能となります。特に重交通区間など、補修を頻繁に実施しているところでは維持管理費の削減効果は大きくなります。

 ただし、工事期間中の交通処理に関しては、迂回路の設定や広報等について事前に十分検討する必要があります。

  なお、バイパスのような新設舗装区間に関しては、コンクリート舗装を当初から採用することが将来の維持管理費の縮減に寄与することは言うまでもありません。





コンクリート舗装が適している路線や箇所はどのようなところなのでしょうか?

  耐久性やライフサイクルコストの優位性といったコンクリート舗装の長所を生かすためには、適用箇所の選択が重要です。コンクリート舗装の長所を生かすことができる適用箇所と適用した場合の有効性は、概ね次のとおりです。


@ 高規格幹線道路、都市間主要道路 〈構造的耐久性、路面性能長期維持〉
 
A トンネル 〈視認性、補修工事削減〉
 
B 交差点 〈わだち掘れ防止、骨材飛散防止、修繕工事削減〉
 
C 軽交通道路 〈供用性長期維持、メンテナンスフリー〉
 

  なお、コンクリート舗装は多くの長所を持っていますが、全ての道路でコンクリート舗装を行うことが有効というわけではありません。例えば、共同溝等の整備が終了していない都市内道路など、路面下占用物の頻繁な工事が予想される箇所では、コンクリート舗装が適しているとは必ずしも言えません。





幹線道路にはどのような種類のコンクリート舗装が用いられるのでしょうか?

 コンクリート舗装は、構造的耐久性、路面性能長期維持等の長所を持っていることから、幹線道路に活用することが推奨されます。

 幹線道路には、初期コストを考慮して普通コンクリート舗装を用いることが一般的ですが、低騒音化を考慮する場合にはコンポジット舗装を、走行性を考慮する場合には連続鉄筋コンクリート舗装を用いることがあります。


普通コンクリート舗装

 最も一般的に用いられているコンクリート舗装です。コンクリート版の厚さは一般に20〜30cmで、5〜10m間隔で横収縮目地が設けられます。通常、横目地にはダウエルバーが、縦目地にはタイバーが設けられます。目地部が構造的弱点になったり、走行時に衝撃感を生じることがあります。

詳しくは、コンクリート舗装のメニュー 普通コンクリート舗装を参照。


コンポジット舗装

 コンポジット舗装とは、下層に剛性の高いセメント系の版、上層にアスファルト混合物を用いた舗装です。長期の耐久性が向上する他、より高い走行安全性・快適性の確保や維持修繕がしやすくなるなどのメリットがあります。

詳しくは、コンクリート舗装のメニュー コンポジット舗装を参照。


リストポイント  新東名高速道路でのコンポジット舗装の採用(コンクリート舗装新時代 75ページ)


連続鉄筋コンクリート舗装

 連続鉄筋コンクリート舗装とは、コンクリート版に横目地を入れる代わりに、縦方向に配置した鉄筋によってひび割れを分散させ、舗装としての連続性を持たせた舗装です。普通コンクリート舗装のような横目地を設けないため、振動や騒音が軽減され、走行性が向上します。

詳しくは、コンクリート舗装のメニュー 連続鉄筋コンクリート舗装を参照。