設計編


Q.4 1DAY PAVEの舗装厚さの定め方を教えてください。

  1DAY PAVEに用いるコンクリートの硬化後の力学的特性は、通常の舗装コンクリートと同様ですので、舗装厚さの定め方も通常のコンクリート舗装と同様の方法になります。「早期交通開放型コンクリート舗装1DAY PAVE製造施工マニュアル〔第2版〕」(以下、マニュアル)の2章に示されるように、舗装厚さは、各道路施設の管理者の設計基準に基づき、交通量やコンクリートの設計基準強度に応じて定められます。基本的な考え方はどの設計基準でも同じですので、ここでは、マニュアルの2章2.2に示した道路舗装の例で説明します。


@ 路盤構成と厚さを定める

  まず、コンクリート版の下の路盤上で、所要の支持力が得られるように路盤の構成と厚さを定めます。表4-1に各交通量区分における路盤構成と厚さを示します。交通量と路床の設計CBRに応じて、路盤構成と厚さを決定し、路盤上で所要の支持力が確保できるようにします。


表4-1 交通量区分に応じた路盤構成と厚さ
 

A コンクリート版の厚さを定める

  次に、設計用期間中の交通荷重の繰り返しに耐えられるように、コンクリート版の厚さを定めます。表4-2に、交通量区分に応じたコンクリート版の厚さを示します。使用するコンクリートの設計基準曲げ強度を4.4MPa(または3.9MPa)と定め、そのうえで、舗装計画交通量が多くなるほど、版厚が厚くなるように設定して、設計期間(一般に20年)内に舗装が壊れないようにします。


表4-2 交通量区分に応じたコンクリート版の厚さ
 


Q.5 損傷が生じたコンクリート舗装版の一部を1DAY PAVEで
打ち換える局部打換え工法について教えてください。

  コンクリート舗装版の隅角部や横断方向などに貫通ひび割れが発生すると、ひび割れ箇所に段差が生じ、走行快適性や走行安全性が損なわれます。このような場合は、破損部分を打ち換える「局部打換え工法」が有効で、1DAY PAVEを適用することが可能です。1DAY PAVEを用いる場合も、設計や施工は通常の舗装コンクリートを用いる場合と同様になります。

  図5-1に、破損個所と局部打換え範囲の模式図を示します。打換え工法の施工法と留意点はひび割れの発生箇所に応じて異なりますので、以下にひび割れ発生箇所ごとに概要を示します。なお、図5-1中の(1)、(2)、(3)のひび割れに対する局部打換え工法については、日本道路協会の「舗装の維持修繕ガイドブック2013」1)に詳細な内容が記載されていますので、ご参照ください。


 
図5-1 破損箇所と局部打換え範囲

(1) 目地に近い位置のひび割れ

@ひび割れの発生位置が目地から10cm以内の場合

  ひび割れから目地までの間のコンクリート版を打換え範囲とします。打換え深さはダウエルバー上部までとし、ダウエルバー下方のひび割れは横収縮目地として取り扱います。


Aひび割れの発生位置が目地から10cm以上3m未満の場合

  ひび割れから目地までの間のコンクリート版を打換え範囲とし、版全厚を打ち換えます。ひび割れ側の新旧コンクリート界面にはタイバーを設置し、連結します。目地側は、そのまま横収縮目地とします。作業上、打換え延長は最低2m程度が必要となります。


(2)目地から離れた位置のひび割れ

  ひび割れの発生位置が目地から3m以上離れている場合は、ひび割れを含み、ダウエルバーを設置できる幅で道路中心線に直角にカッターで切断し、打換えを行います。


(3)隅角部ひび割れ

  ひび割れを含む範囲のコンクリート版を打換え範囲とします。カッター線が交わる角の部分は、応力集中を避けるために丸みをつけます。既設コンクリートの除去にあたっては、鉄網、ダウエルバー等を傷つけないよう注意する必要があります。


(4)目地に近い位置の目地の両側のひび割れや破損

  目地に近い位置で、目地の両側にひび割れが発生した場合は、図5-2に示すように、@元の横目地位置に収縮目地を再設置する方法、A既設版との横突合せ部を収縮目地にする方法の2種類があるようです。


 
図5-2 目地部の破損で、その両側を打ち換える事例(イメージ)

@ 元の目地位置に収縮目地を再設置する方法例えば文献2)

  既設版との横突き合わせ部には、既設版に削孔して異形棒鋼(タイバ−)を挿入固定します。この部分は車両が頻繁に通過する横そり目地になりますので、通常の横収縮目地のダウエルバーと同直径の異形棒鋼を同間隔(D25、長さ70cm、配置間隔40cm)で配置します。もとの横目地位置には、通常の横収縮目地と同じダウエルバー(直径25mmの丸鋼、長さ70cm、配置間隔40cm)を備えたダウエルバーアッセンブリを設置します。

  この結果、目地は突き合わせのそり目地が2本、横収縮目地が1本の、計3本の横目地部が形成されます。打換え延長は、3本の鉄筋が縦方向に入るため(70+35*2=140cm)、最低2m程度は必要となります。

A 既設版との横突合せ部を収縮目地にする方法例えば文献3)

  既設版との横突き合わせ部には、既設版に削孔して丸鋼を挿入固定し、ダウエルバーを用いた収縮目地とします。この方法では目地が2本で済みます。打換え延長は、最低1.5m程度は必要となります。

  2本の横突き合わせ部の片方を収縮目地(ダウエルバ−使用)、片方をそり目地(タイバ−使用)とする事例もあるようですが、片方をそり目地とする場合は、片方の目地間隔がもとの設計よりも長くなりますので、ここでは両方とも収縮目地とする構造を推奨します。

  なお、既設版との縦突き合わせ部について、図5-2の×印部分に示すような、本来望ましくないT型目地 が形成されるのは避けられません。したがって、目地の動きにより既設版や打換え版にひび割れを誘発させないように、打換え部分の縦目地にはタイバーなどを設けないことが望ましいようです。


【参考文献】

1) 日本道路協会:舗装の維持修繕ガイドブック2013、pp.138-140、2013年

2) 竹林征三、高田雄行、武井博久、宋栄一:V-3 セメントコンクリ−ト舗装の調査、
補修について(その3:施工編)-甲府バイパス舗装補修工事における施工例-、土
木学会第42回年次学術講演集、pp.44-45、1987年

3) 吉本徹:交通開放の強度確認方法と普通コンクリ−ト舗装の目地部補修、舗装、
Vol.48、No.10、p.27、2013年



Q.6 局部打換え工法における設計上の留意点を教えてください。

  局部打換え工法では、一般に周囲の既設コンクリート舗装版による拘束を受けるため、外部拘束によるひび割れが生じやすいようです。そのため、打換え部の延長や形状および隣接版も含めた目地割りについて注意する必要があります。


1)打換え部の延長や形状

  局部打換え工法では、打換え部の延長や、打換え部の長辺と短辺の長さの比(細長比、アスペクト比)などに注意する必要があります。打換え部の形状や範囲に関する規定は道路施設の管理者や文献により異なりますが、規定の例を表6-1に示します1)〜4)。この規定のポイントは以下のようになります。

チェックポイント  打換え1箇所の面積の上限がある。ただし、一辺の長さが短すぎても良くない。

チェックポイント  打換え箇所の形状が細長すぎる場合は、鉄網をいれて補強することが望ましい。

チェックポイント  横目地に荷重伝達装置を用いない場合は、縦方向の打換え版長さをある程度の大きさにしないと
打ち換えたコンクリート版がバタついたり、回転したりして、その結果目地に段差が生じる恐れ
がある。


表6-1局部打換えにおける寸法の規定の例1)〜4)を基に作成
 

2)隣接版を含めた目地割り(T字型目地への対応)

  コンクリ−ト舗装の目地割りでは、隣接版にひび割れを誘発する恐れのあるT型目地割りは望ましくはありません5)。しかし、局部的な打換えなので、図6-1のような打ち換えではT字型目地など変則的な目地の設置が避けられない場合があります。この場合は打換え部分のT字型目地の間は、既設版に誘発ひび割れを誘発しないように、タイバ−を使用せず目地板を挟んだ縁切り目地にする場合もあります。


 
図6-1 局部打換えのT字型目地
 
 図6-2 局部打換えのT字型目地への対応策

【参考文献】

1) 日本道路協会:舗装設計便覧 平成18年度版、p.213、2006年

2) ACPA: Guidelines for Full−Depth Repair CONCRETE TECHNOLOGY TB00202P、
1995年

3) A.C.Blink:THE PHYSICS OF CONCRETE、Table 6、第13回コンクリ−ト道路シンポ
ジウム、ベルリン、2018年

4) 防衛施設庁:飛行場基本施設等の設計要領、平成16年、p.112、2004年

5) コンクリ−ト舗装ガイドブック2016、pp.74-75、コラム11 目地割りの注意点、2016年





Q.7 1DAY PAVEに鉄網を設置する際の注意点があれば教えてく
ださい。

  1DAY PAVEにおいても舗装用コンクリ−ト舗装と同様に、道路施設の管理者の設計基準に合わせて鉄網の要否を判断する必要があります。一般に車道では日本道路協会の舗装設計施工指針に従い、鉄網を設置する必要があります。鉄網を設置する場合の施工上の留意点を、以下に示します。

  異形棒鋼(D6)を溶接で格子状に組上げた鉄網を、表面から版厚の1/3の位置に設置します。一般に鉄網の設置法には、以下の2つの方法があります。

    @あらかじめチェアやコマを用いて所定の位置に鉄網をセットし、その後にコンクリートを打ち
込む

    A版厚の2/3ほどの厚さ分下層コンクリートを敷きならし、そのうえに鉄網を敷き、さらにそのう
えに上層のコンクリートを打ち込む

  一般的なコンクリート舗装の施工では、Aの方法を採用することが多いようです。しかし、Aの方法では1DAY PAVEに用いるコンクリ−トは、1)スランプが大きいので上層を締め固める際、鉄網が沈んでしまい所定の位置に設置することが難しいこと、2)硬化が早いので打ち重ねが難しいことから、@の方法で施工する事例がほとんどです。

  鉄網の設置位置は、設計位置からプラスマイナス3cm程度の誤差は問題ありません。ただし、施工時に鉄網が動くと硬化後のコンクリート版に悪影響を与えますので、コンクリートの打ち込み時に鉄網が動かないように、しっかり固定する必要があります。作業員が鉄網上を歩行する場合に、別の鉄網(メッシュロ−ド)を置いて荷重を分散させ、下の鉄網が変形しないようにした例1)も報告されています。

  なお、近年、コンクリート舗装版に鉄網を入れる必要についての議論2)もありますが、鉄網を省略する場合は道路施設の管理者と事前に十分な協議を行う必要があります。



写真7-1 目地金物等の設置状況1)
   
写真7-2 メッシュロード1)

【参考文献】

1) 大貫洋一、吉川武弘、南雲克之:早期交通開放型コンクリート舗装(1DAY PAVE)の施工
事例、大林道路技術報、pp.11-14、No.44 、2019年

2) 日本道路協会:コンクリート舗装ガイドブック2016、p.11、2016年