施工編


Q.13 1DAY PAVEの施工方法は一般的な土間コンクリートと同様
と考えて問題ないでしょうか。

  1DAY PAVEは土間コンクリートと異なり車両の走行に供するため、舗装としての性能(平たん性、すべり抵抗性など)を確保できるように施工を行う必要があります。

  1DAY PAVEに限らずコンクリート舗装を車道に適用する場合、路面の平たん性確保に考慮した仕上げ方法を採用する必要があります。平たん性の規格値は道路管理者各々の仕様によりますが、コンクリートの硬化後3mプロフィールメーターにより、機械舗設の場合、測定値の標準偏差(σ)が2.4mm以下、人力舗設の場合3mm以下が基準として一般的です。これらの基準を満足するため、車道ではトラススクリードなどを用いた表面仕上げが多く採用されています。

   また、土間コンクリートは金ごて押さえで仕上げることが一般的ですが、コンクリート舗装を車道に適用する場合は一定のすべり抵抗値を確保するため、一般的に平たん仕上げ後に粗面仕上げ(ほうき目仕上げ)を行う必要があります。

   1DAY PAVE特有の施工上の留意点としては、使用するコンクリートの粘性が高く、ブリーディングもほとんど生じないため、コテ仕上げ時にモルタルがコテに付き易いことが挙げられます。このため、必要に応じて仕上げ補助剤の使用を検討し、平たん仕上げ、粗面仕上げを行って下さい。



(a) トラススクリードによる平たん仕上げ

(b) 粗面仕上げの様子
写真13-1 仕上げの施工状況


Q.14 粗面(ほうき目)仕上げを行う際の留意点を教えてくださ
い。

  よい粗面仕上げを行うためには、ほうきの選定と並んで、仕上げを行うタイミングも重要となります。仕上げを行うタイミングは、施工時の気象条件、現場状況、舗装版体の寸法、施工方法等を考慮し、コンクリートの状態を確認し、決定します。

  適切なタイミングで施工した場合、図14-1に示すように大きな凹凸(マクロテクスチャ)および小さな凹凸(ミクロテクスチャ)が形成されます。すべり抵抗性の確保には、大きな凹凸と小さな凹凸の両者が必要ですが、特に小さな凹凸が形成されることが重要1)です。ほうき目仕上げ後に細かな気泡がコンクリート表面に残るようであれば、細かな凹凸が確保されているといえます。大きな凹凸は雨水等の排水性能に寄与します。

  タイミングが早すぎる場合、コンクリート表面が軟らかすぎ、図14-2のように細かな凹凸が形成されない場合があります。

  一方、粗面仕上げのタイミングが遅すぎる場合は、コンクリート表面が硬くなり過ぎ、特に大きな凹凸が形成しづらくなります。そのような場合は、仕上げ補助剤を用いて再度コテ仕上げを行い、コンクリート表面を軟らかくする、あるいはほうきに重りを付けるなどの対策を施し、粗面仕上げを再度行うようにしてください。できれば事前に施工タイミングを確認しておくことが望ましいです。

  粗面仕上げのタイミングの決め方については、いくつかの方法が提案されています。例えば、参考文献2)は鉄球をコンクリート表面に落下させたときのくぼみの大きさを測定することで、粗面仕上げのタイミングを計っています。参考文献3)は近赤外水分計を用いてコンクリート表面の表面濡れ率を用いて粗面仕上げのタイミングのタイミングを計るというものです。いずれにしてもコンクリート表面が適度な硬さになることを把握することが、適切な粗面仕上げを行うコツになります。


    
図14-1 ミクロテクスチャが形成された
コンクリート舗装表面のイメージ
図14-2 粗面仕上げのタイミングが早く、
ミクロテクスチャが十分形成されな
いコンクリート舗装表面のイメージ

【参考文献】

1) 泉尾英文、瀧波勇人、佐藤智泰、上野敦:舗装路面のテクスチャとすべり抵抗性に関する一検
討、舗装、Vol.52、No.10、pp24-29、2017年

2) 土木研究所共同研究報告:コンクリート舗装の維持修繕工法の改善に関する共同研究報告書」
III早期交通開放技術の改善編、pp.9-14、2019年

3) 鈴木徹、東本崇、藤林省吾:コンクリート舗装のほうき目粗面仕上げ開始時期の定量的管理手
法、道路建設、767号、pp.69-75、2018年



Q.15 1DAY PAVEの表面仕上げや初期養生における留意点を教え
てください。

  1DAY PAVEに用いるコンクリートは水セメント比が低く、ブリーディングがほとんどないため、一般的な舗装コンクリートに比べて表面仕上げがしにくい傾向があります。そのため、市販の仕上げ補助剤を散布しながら表面を仕上げることが望ましいです。仕上げ補助剤を用意していない場合は、フォグスプレーなど(動力噴霧器などで霧状に噴霧)で対応してください。

  1DAY PAVEはブリーディングがほとんどないため、表面仕上げ後に直射日光や風の影響により、ひび割れの原因となる急激な乾燥が生じやすくなります。そのため1DAY PAVEでは表面仕上げ終了後、速やかに養生剤の散布やシート等による初期養生を行うことが必須です。初期の養生としては、一般にコンクリート表面に養生剤を散布する方法で行われます。その後、シート養生やマット養生に取り掛かることが非常に重要です。特に夏場は表面仕上げの後はできるだけ早期に養生を行い、日射や風による乾燥を防止する必要があります。万が一プラスチック収縮ひび割れが発生した場合は、速やかにタンピングを行ってください。



(a) 仕上げ補助剤使用による表面仕上げ

(b)フォグスプレー(動力噴霧器使用による噴霧)
 

(c) シート養生

(d) マット養生
写真15-1 養生方法の種類と作業状況作業の状況


Q.16 寒中期に施工するコンクリート版の養生についての留意点を
教えてください。

  寒中期のコンクリート版の養生は、少なくとも曲げ強度で1N/mm2、圧縮強度で5N/mm2になるまで凍結を受けないようにしなければなりません。また、養生中に散水する場合にはコンクリートが凍結を生じることがないように留意する必要があります。一般にコンクリート版の養生は、外気温が4℃以上であれば通常の養生方法でよいとされていますが、1DAY PAVEの場合は、材齢1日の強度発現に遅れが生じないように対策する必要があります。そのため、コンクリートの養生期間中の平均気温が15℃未満となる場合は、保温養生または給熱養生の検討が必要です。

  保温養生は、マットやシートを重ねて、水和熱によってコンクリートの温度を保つ養生方法です。給熱養生は、ジェットヒーターによる温風養生や電気シート養生など加熱による養生方法です。給熱養生は、加熱された空気により相対湿度が低下するため、養生囲い内は非常に乾燥した環境になりやすいです。散水によりコンクリートが湿潤状態に保たれるよう注意が必要になります。また、給熱養生の場合は、養生撤去時にコンクリート版の温度と外気温の温度差が大きい場合に急激な版表面温度の低下により温度ひび割れが発生することが懸念されます。そのため、晴天時の正午前後の外気温が上昇し、コンクリート版との温度差が最小となるタイミングで養生を撤去することが望ましいです。


  
(a) マット養生

(b) ジェットヒーターによる給熱養生
写真16-1 寒中期の養生状況の一例


Q.17 急こう配がある現場に施工した事例があれば教えてくださ
い。

  1DAY PAVEでは、スランプフロー40cmからスランプ18cm程度の比較的軟らかめのコンクリートが多く用いられていますが、道路勾配等の傾斜がある場合はスランプ8〜15cm程度の比較的硬めの配合が用いられています。

  これまでに、1DAY PAVEを急こう配の現場で施工した事例として、下記の4件をご紹介いたします。いずれもコンクリートをトラックアジテータで運搬し、人力施工を行った事例です。関連の文献もお示ししましたので、ご参照ください。


≪施工事例1≫1)

  2015年に最大勾配25%の生活道路に施工した事例で、コンクリートのスランプは8cmに設定されています。施工時期、数量およびコンクリートの配合などは、早期交通開放型コンクリート舗装1DAY PAVE製造施工マニュアル〔第2版〕の6章施工事例に掲載していますのでご参照下さい。

≪施工事例2≫2)

  2015年に最大勾配12%の民間の鉱山道路に施工した事例で、コンクリートのスランプは12cmに設定されています。試験施工で大型の模擬型枠にスランプの異なるコンクリートを打ち込み、ダレの状況を確認することで、コンクリートのスランプを決定しています。この施工事例では、勾配12%の場合、スランプが12cm程度であればダレが生じないことを確認して施工が行われています。

≪施工事例3≫3)

  2014年に最大勾配12.5%の地方自治体の工事用道路に施工した事例で、コンクリートのスランプは12cmに設定されています。1DAY PAVE製造施工マニュアル〔第2版〕の6章施工事例に掲載していますのでご参照下さい。下り勾配での施工では、トラックアジテータの前部が下がり、排出が困難なコンクリートが発生するなどの課題がありました。また、本施工事例では、すべり抵抗性試験も行っていますので、参考にしてください。

≪施工事例4≫

  2020年に最大勾配11%の民間工場構内の道路に適用した事例で、勾配がある箇所に施工したコンクリートのスランプは15cmに設定されています。1DAY PAVE製造施工マニュアル〔第2版〕の施工事例に掲載していますのでご参照下さい。当初は施工性を考慮してスランプフローで管理していましたが、勾配のある箇所はダレを防止するため、スランプ管理に変更した事例です。


【参考文献】

1) 建設通信新聞:2015年6月11日朝刊11面

2) 森田浩一郎、塩谷 勝、山村鎮久、藤崎浩美:急カーブ・急こう配での早期交通開放型コンク
リート舗装の施工報告、第70回セメント技術大会講演要旨、pp.190-191、2016年

3) 亀田峰雪、甲斐祐介、苅部五郎、土井隆泰:急勾配道路での1DAY PAVE施工報告 全国初地
方自治体による公共事業での実施工、コンクリートテクノ、Vol.34、No.2、pp.24-29、
2015年



Q.18 1DAY PAVEを機械施工に適用することは出来ますか?

  1DAY PAVEは人力による小規模施工を対象に、補修工法として開発されました。1DAY PAVEに用いるコンクリートはW/Cが低く、粉体量の多い配合となるため粘性が高くなりやすく、気候条件によっては施工中にワーカビリティが過大に変化することが考えられます。また、ブリーディングがほとんど無く、粗面仕上げのタイミングに注意が必要であることなどからも、一般的には機械施工の適用の際には事前の入念な検討が必要です。

  一度に大規模な施工が必要であるなど、どうしても機械施工が必要な場合には、平たん性やすべり抵抗性などの路面性状を適切に得るため、配合の検討に併せて特に以下の点について検討が必要です。

■選定した施工機械で適切な締固め、平たん仕上げが可能か

■平たん仕上げ完了後のコンクリートが強張る前、適切な時期に粗面仕上げ可能な施工計画になって
いるか


  最近では、一部で1DAY PAVEの施工において機械施工を適用した事例(早期交通開放型コンクリート舗装1DAY PAVE製造施工マニュアル〔第2版〕6章施工実施例の事例22を参照)も報告されていますが、粗面仕上げは人力施工を採用するなど工夫が見られます。機械施工を適用する際は上記に十分留意して検討頂ければと思います。


 
写真18-1 機械施工による1DAY PAVE施工事例