コンクリート舗装の課題と対応技術


コンクリート舗装はなぜ普及していないのでしょうか?その原因にはどのようなものがあるのでしょうか?

コンクリート舗装が多くの長所を持つにも関わらず活用されていない原因として、これまで以下のような状況にありました。


@ ライフサイクルコスト(生涯費用)はコンクリート舗装の方が優位ですが、初期コストに対する評価が優先されがちでした。
 また、発注者においては、建設と維持管理が別個の業務と捉えられがちで、両者が総合的に評価されているとは言えませんでした。
 
A コンクリート舗装の施工実績が少なく、発注者、施工者ともコンクリート舗装に関する知識・経験に乏しいため、コンクリート舗装に関する理解がされておらず、これを採用するという動機付けが少ない状況にありました。
 
B 沿道住民や道路利用者からの騒音、走行快適性といった要望への対応が優先されがちで、コンクリート舗装の持つ供用寿命の長さ、耐久性の高さ、ライフサイクルコストといった経済性や維持管理の容易さ、環境負荷の軽減等の評価があまりなされていませんでした。
 
C 現行の入札契約制度上、コンクリート舗装のもつライフサイクルコストの優位性が評価されるような仕組みには必ずしもなっていません。
 
C コンクリート舗装の構成要素であるセメントや骨材は、国内で生産されているのみならず、特にセメントは各種の副産物・廃棄物を有効活用して生産されており、地域の廃棄物の処理に有効であるばかりでなく、廃棄物の最終処分場不足の緩和にも大きく貢献していますが、この点が理解されていませんでした。
 

リストポイント  日本のコンクリート舗装のシェア

リストポイント  諸外国のコンクリート舗装のシェア




コンクリート舗装は施工から交通開放するまでに時間を要しますが、短期間で交通開放ができる工法はあるのでしょうか?

 コンクリートの舗設から交通開放までの期間は、通常のコンクリート舗装の場合(普通ポルトランドセメントを使用)で2週間です。転圧コンクリート舗装(RCCP))は、交通開放までの時間が比較的短く、普通ポルトランドセメントで3日です。

 セメント協会では、一般にコンクリート舗装が施工から交通開放まで時間を要することから、養生期間が1日以内で交通開放可能なコンクリート舗装を開発しました。しかも生コンプラントに通常ある材料を用いることからコストも安く、施工も簡便であるという特長を備えています。この技術は2013年8月にNETIS登録されています(KT-130044-A)。

 なお、舗設後、短時間で交通開放する手段として、若干コストは嵩みますが超早強コンクリートを使用する方法があります。セメントに超早強セメント使用するタイプと超早強性の混和剤を使用するタイプがありますが、いずれも材齢1日で、曲げ強度4.5N/mm2を発現します。

 さらに、即時交通開放できる工法としては、プレキャストコンクリート版舗装もあります。


1DAY PAVE(早期交通開放型コンクリート舗装)

 養生期間が長く、交通開放までに時間を要することは、コンクリート舗装の大きな課題の一つです。セメント協会では、この課題を解決するため4つの開発目標を設定し1 DAY PAVEを技術開発しました。@養生期間を材齢1日以内に短縮(交通開放のための目標曲げ強度を1日以内に達成)、A汎用的な材料を用いてコストを抑える、B特殊な施工方法をとらない、C舗装に求められる性能(平たん性、すべり抵抗等)が得られる。

 いくつかの現場で試験施工を重ね性能を確認し、2013年8月には国土交通省の新技術情報提供システムNETISに登録されました(KT-130044-A)。

詳しくは、コンクリート舗装のメニュー 1DAY PAVE舗装を参照。


リストポイント  1 DAY PAVEがNETIS登録(セメント・コンクリート No.800,2013.10)


プレキャストコンクリート版舗装

 プレキャストコンクリート舗装は、工場で生産されたプレキャスト平板(標準サイズ:5.0×1.5m)を路盤またはアスファルト舗装の基盤上にセットし、基盤とRC版の間隙にグラウト材を注入して仕上げるコンクリート舗装です。

 トンネル内など耐久性や照明効果を要求される箇所や、交差点部等の流動わだち対策を対象としたコンクリート舗装です。施工が容易で、長期の養生時間が不要であり、迅速施工ため、交通開放までの時間が短いのが特長です。(出典:日本道路建設業協会HP)

詳しくは、コンクリート舗装のメニュー プレキャストコンクリート工法を参照。


リストポイント  仙台市内国道4号で大規模PRC版舗装(セメント・コンクリート No.790,2012.12)


転圧コンクリート工法(RCCP)

 転圧コンクリート工法(RCCP)とは、単位水量を減じた硬練りコンクリートを使用し、アスファルトフィニッシャで敷き均した後、振動ローラ等により転圧、締固めて施工される舗装です。施工方法が簡便で、早期交通開放が可能です。また施工コストも安価で、版厚や幅員の選択が自由です。

詳しくは、コンクリート舗装のメニュー 転圧コンクリート工法を参照。


リストポイント  転圧コンクリート舗装の耐久性目視調査報告書(2007年11月) セメント協会





損傷したコンクリート舗装は補修が大変だと聞きますが、補修の実態はどのようになっているのでしょうか?

 基本的に、コンクリート舗装は適切な設計・施工が行われれば、安定した路面性状が長期間にわたって確保できるとともに、適切な維持修繕により、構造的寿命をさらに延ばすことが可能です。

 一方で、コンクリート舗装の設計・材料・施工に関する十分な経験や知識が不足している場合等には、予期しない気象・交通条件などの発生により設計期間中に破損する場合もあります。このような場合には、路面の性能を保持するための調査や補修が必要となることがあり、破損形態などから原因を推定し、コンクリート舗装の種類や損傷状況に応じた対策を実施することが重要です。


 セメント協会では、このような状況を踏まえ、2010年3月に「リストポイント  コンクリート舗装の補修技術資料」を改訂発刊しています。本書は、コンクリート舗装の種類と破損事例、踏査による調査のポイント、破損に対する補修工法、補修材料および補修マニュアルについて取りまとめたものです。この技術資料を利用して、コンクリート舗装の種類や損傷状況に応じた対策を講ずることが可能です。


コンクリート舗装の補修工法

コンクリート舗装の破損の種類や原因、要因等により、次のような補修工法があります。

補修工法
工法の説明
@シーリング工法 注入目地材等が脱落、飛散した場合やコンクリート版にひび割れが生じた場合に、目地やひび割れに注入目地材等で充填する工法。
 
Aパッチング工法 段差、摩耗、角欠け、ポットホール等をできるだけ小面積で補修材料を充填し、路面の平たん性を維持する応用範囲の広い工法。
 
B表面処理工法 コンクリート版の表面に摩耗等の破損を生じた場合に、版表面に厚さ3cm未満の薄層の舗装を行い、車両の走行性、すべり抵抗性などを改良する工法。
 
C粗面処理工法 コンクリート表面を粗面化するための工法で、ショットブラスト工法やウォータージェット工法、ダイヤモンドグラインディング工法等があり、コンクリート薄層オーバーレイ等の付着処理方法として用いられるほか、すべり抵抗を回復する目的にも使用される。
ダイヤモンドグラインディング工法は、隙間なく取り付けたダイヤモンドブレードを使い、硬化したコンクリート舗装表面を薄層で切削する工法で、走行性の向上や表面形状の修復等に使用される。
 
D注入工法 コンクリート版と路盤との間に生じた空隙を充填したり、沈下した版を注入圧力により押し上げ元の位置に戻したりする工法で、サブシーリング工法またはアンダーシーリング、アンダーシールとも呼ばれる。
 
Eバーステッチ工法 ひび割れの生じたコンクリート版を、鉄筋等を用いて連結し、ひび割れ部の荷重伝達を確保する工法。通常、注入工法を行った後、ひび割れ部のシーリングとバーステッチ工法を組み合わせて行うことが多い。
 
F局部打換え工法 版底面に達するひび割れが隅角部や版の横断方向に発生し、ひび割れが開いて荷重伝達が期待できない場合に、版あるいは路盤を含めて局部的(ひび割れをはさんで3m以上)に打換える工法。  
 
Gオーバーレイ工法 破損が進展し全面的に破損する恐れがある場合や、段差、摩耗など版表面の破損が著しくなった場合で、かつ荷重支持性能が保持されている場合に、セメントコンクリートやアスファルト混合物でオーバーレイする工法。
 
H打換え工法 コンクリート版の破損がひどく、@〜Gの補修方法等では対処できない場合に実施する工法で、打換え範囲はコンクリート版一枚が最小単位。 
 
出典 コンクリート舗装の補修技術資料 セメント協会

コンクリート舗装の健全性調査

 コンクリート舗装の現況調査には、簡易調査、路面の定量調査、破損原因の調査等があります。これらの調査により、コンクリート舗装の状態を正確に把握するとともに、破損が生じた場合にはその原因を調査します。

@簡易調査

 日常的な巡回パトロール時の目視観察や、道路利用者または沿道住民からの情報により、路面の状況などを把握する調査です。

A路面の定量調査

 定期的に路面の性状を調査し、供用性能の経時変化を把握する目的で実施されます。
 路面の状況は、実際の測定などにより定量的に調査します。代表的な調査項目としては、わだち掘れ量、ひび割れ率またはひび割れ度、平たん性などがあります。

B破損原因の調査

 舗装の破損原因を特定するために行われるもので、単独または路面の定量調査と同時に行われます。
 この調査では、調査水準により、採取コアの観察調査、たわみ量測定などの舗装構造の非破壊調査や開削調査などが実施されます。


コンクリート舗装の補修技術資料

 本書は、コンクリート舗装の種類と破損事例、踏査による調査のポイント、破損に対する補修工法、補修材料および補修マニュアルについて取りまとめたものです。この技術資料を利用して、コンクリート舗装の種類や損傷状況に応じた対策を講ずることが可能です。


リストポイント  コンクリート舗装の補修技術資料 セメント協会





コンクリート舗装路面は滑りやすいと言われることがありますが、実際にはどうなのでしょうか?

 舗装路面の滑りやすさは、舗装のすべり抵抗値を測定することにより求めることができます。

 舗装のすべり抵抗値を測定する方法には、すべり抵抗測定車によるすべり摩擦係数測定、DFテスタ(Dynamic Friction Tester)による動的摩擦係数測定及び振り子式スキッド・レジスタンステスタによる測定(BPN:British Pendulum Number)があります。 


 コンクリート舗装路面のすべり抵抗値は、次のようなデータが土木学会の報告書注1)において報告されています。


@国道の供用性の現状を調査するため、次のような供用年数が異なる普通コンクリート舗装が調査対象となっています。

  • ・供用後 7年時点の一般国道4 号黒磯バイパス中央部 (ア)
  • ・供用後 9年時点の一般国道4 号平泉バイパス     (イ)
  • ・供用後25年時点の一般国道4 号黒磯バイパス南部 (ウ)

A各調査箇所のすべり摩擦係数は以下のようであり、維持修繕要否判断の目標値注2)である0.25 よりも大きい結果でした。

  • ・すべり摩擦係数(60km/h) は、(ア)で0.45、(イ)で0.50、(ウ)で0.51でした。

 このようなデータやアスファルト舗装のすべり抵抗値の測定データから見ても、コンクリート舗装路面が特に滑りやすいとは言えないものと考えられます。


注1) 土木学会舗装工学委員会コンクリート舗装小委員会報告書 第3編供用性分科会報告(2011年11月)

注2) 道路維持修繕要綱 社団法人日本道路協会 1978年7月




コンクリート舗装の騒音レベルは、アスファルト舗装に比べて大きいのではと思うのですが、騒音を低減する方法はあるのでしょうか?

 騒音低減効果が期待されるコンクリート舗装には、小粒径骨材露出舗装やポーラスコンクリート舗装があります。これらの舗装は、タイヤと路面間に発生するエアポンピング音や振動音などが小さくなるため、騒音を低減することができます。また、連続鉄筋コンクリート舗装は目地がないため、目地部に起因する騒音を低減することができます。

 さらに、コンクリート舗装版上にポーラスアスファルト舗装をオーバーレイしたコンポジット舗装は、騒音低減に効果があるだけでなく、構造体としての耐久性が期待できます。

なお、ポーラスコンクリート舗装における騒音の測定結果では、ポーラスアスファルト舗装と同等の性能でした。特に骨材の最大粒径が小さい場合(Gmax:5mm)は、非常に優れた低騒音性能を発揮しました(右図)。


小粒径骨材露出舗装

 小粒径骨材露出舗装とは、小粒径の単粒砕石を粗骨材としたコンクリートの表面のモルタルを除去し、均一で適度な肌理の骨材露出面を形成した舗装です。路面性能の長期維持、構造体としての耐久性が期待できます。

詳しくは、コンクリート舗装のメニュー 骨材露出舗装を参照。


ポーラスコンクリート舗装

 ポーラスコンクリート舗装とは、特殊な混和材料を用いて空隙を保持したポーラスコンクリートを使用し、排水機能や透水機能、騒音低減機能等を持たせた舗装です。ポーラスアスファルト舗装に比べて、交通荷重による空隙つぶれやタイヤの旋回・据え切りによる骨材飛散に対する抵抗性に優れます。

 阪神高速道路は2013年5月に開通した淀川左岸線(1期)区間の一部にポーラスコンクリート舗装を採用しました。これはわが国では高速道路本線で初の取組みとなります。なお施工箇所はボックストンネル内の勾配がきつい区間で、通行車両の交通安全確保のためポーラスコンクリート舗装が採用されました。

詳しくは、コンクリート舗装のメニュー ポーラスコンクリート舗装を参照。


リストポイント  阪神高速道路で高速本線初のポーラスコンクリート舗装(セメント・コンクリート No.795,2013.5)


連続鉄筋コンクリート舗装

 連続鉄筋コンクリート舗装とは、コンクリート版に横目地を入れる代わりに、縦方向に配置した鉄筋によってひび割れを分散させ、舗装としての連続性を持たせた舗装です。普通コンクリート舗装のような横目地を設けないため、振動や騒音が軽減され、走行性が向上します。

詳しくは、コンクリート舗装のメニュー 連続鉄筋コンクリート舗装を参照。


コンポジット舗装

 コンポジット舗装とは、下層に剛性の高いセメント系の版、上層にアスファルト混合物を用いた舗装です。長期の耐久性が向上する他、より高い走行安全性・快適性の確保や維持修繕がしやすくなるなどのメリットがあります。

詳しくは、コンクリート舗装のメニュー コンポジット舗装を参照。


リストポイント  新東名高速道路でのコンポジット舗装の採用(コンクリート舗装新時代 75ページ)