セメントの製造にはクリンカ焼成用の熱エネルギーと、キルンの運転、クリンカや原料の粉砕、系内への送風等に電力エネルギーが用いられており、エネルギー多消費である当産業は古くから省エネルギーに努めてきた。以下に各エネルギーの原単位の推移を示す。熱エネルギー原単位は90年代前半までは熱効率の劣る製造様式から予熱装置(プレヒーター)を有する乾式キルンへの製造様式転換により、それ以降は廃熱回収・利用と非化石エネルギー利用率拡大により低減に努め、電力エネルギー原単位は廃熱発電利用と高効率設備導入等*により低減を進めています。
省エネ設備の事例は以下を参照のこと。
生産技術専門委員会報告T-22 <省エネルギー・省資源技術に関する報告書>
https://www.jcassoc.or.jp/cement/4pdf/jj3c_07.pdf
産業技術史資料情報センター/かはく技術史大系(技術の系統化調査報告書)第23集(2016)
下田 孝 「セメント製造技術の系統化調査」
https://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/093.pdf
最新の予熱装置を有する乾式キルンのシステムは、熱エネルギーを有効に利用することに特徴があります。クリンカ焼成目的に投入された熱エネルギーの余剰分を「原料の予熱および仮焼」に用い、さらにその余剰分を「発電」「原料・石炭等の材料の乾燥」等に用い、可能な限り回収しています。
ある工場の事例では、投入した熱エネルギーの約半分がクリンカ焼成に用いられ、製造工程で発生するガスに含まれる熱エネルギーを発電や原料・石炭等の乾燥に用いることによって回収し、最終的に投入分の約80%のエネルギーを有効に利用していることがわかります。