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FHWA-PL-07-027
Long-Life Concrete Pavements in Europe and Canada
August 2007

報告書の原文

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本頁は、米国連邦道路管理局の報告書FHWA-PL-07-027 「Long-Life Concrete  Pavements in Europe and Canada」をセメント協会舗装技術専門委員会が和訳したものです。原文は、FHWAのホームページで公表されています。

第3章 「 コンクリート舗装の設計 」

カナダ

オンタリオ州は1930年代からコンクリート舗装を施工しており、1960年代から1970年代初頭には高速道路ネットワークの大規模な拡張工事が行われた。オンタリオ州の主要な高速道路の多くは、独自のコンクリート技術で施工された。拡張期の後、道路建設は減少し、多くの熟練技術者が引退していたため、経験や技量の不足に繋がった。1980年代に立ち上がった道路技術プログラムは、今日のオンタリオ州で使われている舗装設計や建設施工の基礎を形成した。

オンタリオ州における標準的なコンクリート舗装は、ダウエルバーを使用したJPCPであり、幅員14ft(4.25m)である。横目地は、ランダムに配置され、間隔は平均14ft(4.25m)で設ける。コンクリート舗装の版厚は、8~11in(200~280mm)の範囲である。版厚設計は、1993年版AASHTO指針やカナダセメント協会の力学的-経験的コンクリート舗装の設計方法が基礎となっている。1992年から、4in厚(100mm厚)のアスファルト系開粒度排水層(最大粒径0.75in(19mm)の砕石、アスファルトセメント1.8%)は、重交通路線の舗装に使われるようになった。6in厚(150mm厚)のアスファルト系ではない開粒度排水層は、軽交通路線に許可された。設計標準は、オプションとして開粒度セメント安定処理路盤を許可しており、2007年に作成された410号線のプロジェクトは、この路盤の最初となる。全長に孔のあいたプラスチックパイプドレーンは、開粒度骨材で埋め戻された路肩部のトレンチに設置された。

過去50年以上に渡って、さまざまなコンクリート舗装設計を試行した後、現在、ケベック州は、鉄網なしのJPCPとCRCPの両方を施工している。1950年代と60年代に、ケベック州は、9in(230mm)厚の鉄網ありのJRCPを施工したが、目地部の劣化に関する問題があった。1970年代に、ケベック州は、9in(230mm)版となるダウエルバーを使用しないJPCP設計に切り替えたが、これらの舗装は目地の欠陥や凍上に関する問題があった。1980年代には、ケベック州は、建設、構造および凍上問題が発生した8in(200mm)厚のJPCPを施工した。1990年代初頭には、ケベック州のコンクリート道路舗装のほとんど全てが打換えを必要としている。

1994年に、2つの標準コンクリート舗装設計は、MTQに採用された。一つめはJPCPであり、1993年版AASHTO方針の方法(50%信頼設計)による30年設計期間以上のトラック交通量で設計された版厚、および凍上に対する予防に十分な全舗装厚を含む。トラックファクター(ESALs/truck)は、舗装設計の目的のために予想トラック交通量を特性として開発された。最新の標準による代表的なJPCP版厚は、10in~13in(250~325mm)の範囲である。目地ありコンクリート舗装は、6in(150mm)の上層粒状路盤と凍上対策として各種版厚の下層粒状路盤とし、目地シールやダウエルバーを使用する。1994年に標準JPCP設計に変えてから建設されたJPCP版では、1%未満にひび割れが見られた。これらの舗装の主要課題は、目地や隅各部の角欠けであり、通常は表面(パーシャルデプス)補修で対応されている。

ケベック州で使用される二つ目の標準コンクリート舗装設計は、CRCPである。CRCPの最初の実験は、 2000年に13号線において1.2mi(2km)区間で施工された。この舗装は、下層粒状路盤の上に0.70%黒鋼を用いた10.6in(270mm)版であった。右路肩はJPCPで舗装され、左路肩はCRCPで舗装された。その他の6つのCRCPプロジェクトは、2003年からケベック州で施工された。40号線の5.6mi(9.1km)区間は、次のタイプである。開粒度セメント安定処理層の上に11in(285mm)版、0.76%亜鉛メッキ筋、JPCP路肩である。30年設計期間は、CRCPにも使われた。ケベック州では、冬期に道路の2車線・km当たり44~66トン(40~60メトリックトン)の融氷剤(塩)を適用するため、CRCPの潜在的な鉄筋腐食の不確実性が懸念される(例えば、イリノイ州で使用されるおよそ2ないし3回分の塩の量に相当)。

ドイツ

ドイツのコンクリート舗装の建設は1880年代に始まり、1934年には、高速自動車道の施工にかなりのコンクリート舗装を使い始めている。1935年から1939年の間には、3500kmの高速道路が建設されたが、それは厚さ10cmの砂質路盤上に、膨張目地間隔10~20mの鉄網入り厚さ22cmのコンクリート舗装であった。

1960年代初頭まで、ドイツでは主として粒状路盤上に鉄網入り目地間隔7.5~10mのコンクリート版が標準であった。ドイツの高速道路の現在の標準的な目地あり鉄網無しのコンクリート舗装構造には1972年に変更され、セメント処理路盤か、アスファルト処理路盤工に、5m横収縮目地を有し、膨張目地を設けない設計が標準となった。ドイツでの最初のスリップフォーム施工は、1982年に実施された。

今日、ドイツの12050kmの高速道路のうち、約25%がコンクリート舗装である。そして高速道路網は全道路ネットワークの延長では約2%に過ぎないが、その投資価値はドイツ全道路網の総価値 342×1000万ドルの26%に相当する。高速道路の平均交通量は、約8000台/日であり、ある道路ではその四倍の交通量のところもある。最大軸重はドイツの車に対しては10.4tで、隣国から来る車両に対しては11.7tである。以上のような交通量の多さと、軸重が大きいことから、旧東ドイツの箇所で表層の打換えや新設工事ではコンクリート舗装が用いられている。


図18 ドイツ高速道路のコンクリート舗装設計カタログ(施工クラスSV)
FHWA-PL-07-027,p.26



図19 ドイツの設計カタログのコンクリート舗装設計部分
FHWA-PL-07-027,p.26



図20 コンクリート、セメント安定処理路盤とジオテキスタイル(ドイツ)
FHWA-PL-07-027,p.27



図21 ドイツの標準的なコンクリート舗装の目地配置
FHWA-PL-07-027,p.27

ドイツでは、コンクリート版厚とそのほかの詳細設計については、交通量とその他の因子から選定するカタログを用いている。このカタログはおよそ10年間隔で改定され(直近は2001年)ている。この標準設計は、30年間の予測累積交通量に基づいている。30年間の標準軸重の累積回数を荷重「B」と定義し、この値が施工クラス、言い換えれば、必要な舗装厚を決定する。七つの施工クラスがあるが、そのうちSVが最高のクラスで、32百万以上の標準軸重回数である。高速道路は、SVの施工クラスに入ると見なしている。

ドイツのカタログによれば、施工される舗装の層厚は、コンクリート版、路盤(セメント安定処理、アスファルト安定処理、粒状路盤)と凍上抑制層の合計である。凍上抑制層の厚さは、その地域の気候と路床土の凍上性により異なってくる。典型的な舗装の層厚は55~90㎝である。図18は施工クラスSVにおける断面設計を、三つの路盤種類ごとに示したものである。ここでこの地域では凍上抑制の観点から層厚は90㎝必要としていた。

図19は、ドイツの舗装カタログの一部を示している。

現在のドイツのカタログでは、セメント安定処理路盤とコンクリート版を付着させないためにジオテキスタイルを用いることにしている。過去には、実は、コンクリート版とセメント安定処理路盤は付着させ、コンクリート版の目地と同じ位置に、セメント安定処理路盤に溝(ノッチ)をつけて、路盤のひびわれを制御しようとしていた。今のカタログではセメント安定処理路盤上では、版厚は27㎝であり、これは従来の付着させた路盤の場合(26㎝)より1㎝厚い。セメント安定処理路盤圧縮強度は、コンクリート版の下なら15MPa、アスコン層の下なら7MPaである。

ジオテキスタイルは不織布ポりスチレンかポリプロピレンであり、厚さは5mmである。この繊維はコンクリートの舗設前にセメント安定処理路盤に敷設され、そのあと施工機械の走行などにより繊維が損傷しないように注意する必要がある。図20は、セメント安定処理路盤と、繊維とコンクリート版を同時にぬいたコアである。

3番目の代替設計法は、粒状路盤を使うものである、ただし、路盤の最少厚さは300㎜で、砕石路盤を用いる。また粒度的には透水性の高いものとしておおり、目地やひびわれの下に滞水したり、交通によりポンピング現象が生じないようにしている。

これら三つの設計では、目地間隔はすべて5mである。横目地には、車両走行部には25㎝間隔で、そのほかの部分では50㎝間隔でダウエルバーを配置している。ダウエルバーの寸法はプラスチックでコーティングした鋼製丸鋼であり、直径25mm、長さ50㎝である。

タイバーも、プラスチックでコーティングされ、直径20㎜、長さ80㎝のものが、縦目地に使用される。

縦施工目地には版あたり5本のタイバーが用いられ、縦収縮目地には版あたり3本のタイバー(?)が用いられる。走行車線の幅は追い越し車線の幅より大きくして、縁部でたわみや応力が減少するようにする。目地の詳細を図21に示す。

オーストリア


図22 オーストリアの設計カタログの一部:異なる交通区分に応じたコンクリート版厚(高速道路はSクラス)
FHWA-PL-07-027,p.27



図23 オーストリアにおける目地有り普通コンクリート舗装の標準的な設計(1in=2.54cm)
FHWA-PL-07-027,p.28

オーストリアのコンクリート舗装設計・施工基準RVS 8S.06.32は、オーストリア道路鉄道運輸協会(FSV)のコンクリート舗装WGによって制定され改訂されている。この基準は、図22に示すように、6つの異なる交通荷重区分に対して、表層コンクリートと路盤の厚みを規定している。最も重交通となるS区分(1800万から4000万の破壊輪数)は、高速道路で使用される。S区分の高速道路やその他の車道に適用される、一般的な舗装の設計は、45cmの粒状路盤または20cmのセメント安定処理路盤の上に、5cmのアスファルト中間層を設け、その上に25cmの普通コンクリート舗装とする。目地間隔は、5.5mから6mとする。

オーストリアでは、表層のコンクリート舗装は2層打ちで打設し、21cm以下には普通骨材または再生骨材を、4cm以上には耐摩耗性を有する骨材を使用する。表面は、露出した骨材のテキスチャーにより決まる。2層打ちの施工方法、骨材露出工法の詳細は4章に記述する。

横断方向の目地に設置するダウエルバーは、直径26mm長さ500mmのものを、車輪通過位置により近い場所と、さらに車輪間に設置する。縦断方向の目地に設置するタイバーは、直径14mm長さ700mmのものを、2m間隔(一つのスラブに3つのタイバー)で設置する。目地は、横断縦断ともに8mm幅でカットし、横断方向は成形目地材を、縦断方向には注入目地材を用いる。図23に、オーストリアの一般的なコンクリート舗装の設計を詳細に示す。

 ベルギー


図24 1930年代のベルギーにおける端部増厚コンクリート舗装設計
FHWA-PL-07-027,p.29



図25 55年後でも供用中のベルギーコンクリート舗装
FHWA-PL-07-027,p.29

ベルギーはコンクリート舗装の歴史が長い。1925年に構築されたブリュッセルのロレーヌ通りのコンクリート舗装は、2003年のコンクリートオーバレイが施されるまで、供用されていた。この道路は、南ブリュッセルから高速道路につながる森林道路であり、コンクリート版厚は15cmである。

1930年代から設計について詳細な検討が行われており、図24に示されるように、端部荷重がコンクリート舗装のひび割れに影響することが分かった。当時の対処法として、粒状路盤の場合は最小版厚を12cmとし、また路床上では最小版厚を15cmとした。どちらの場合も、端部厚さを5cm厚くした。

ブリュッセルのロレーヌ通りの事例は例外的でなく、ベルギー国内には供用50年以上のコンクリート舗装が数多くある。図25は、1950年に建設されたLeopoldsburgとHechtelを結ぶコンクリート舗装で、現在も供用中である。目地間隔が長い版では、ひび割れ・段差・角欠けが発生したため、コンクリート舗装の設計法を見直した。今日の普通コンクリート舗装では、目地間隔が4~5mで、横断目地にダウエルバーが設置される。

CRCPは1960年に初めて施工され、1968年にコンクリートオーバレイされた。鉄筋比は0.3~0.5%であった。2番目のCRCは1964年に建設された。

1960年代後半に、道路公社とベルギーセメント研究センターの技術者が米国視察を行った。当時の米国では、CRCPが3800km構築されていた。米国のCRCP設計および施工技術が導入され、1970年代のベルギー高速道路ネットワーク構築に貢献した。

1970~1977年に、版厚20cm、鉄筋比0.85%、鉄筋位置が版厚の30%の高さ(上から6cm)となるコンクリート舗装が構築された。6cmアスファルト中間層が、コンクリート版と排水粒状層上の貧配合コンクリート版の間に、分離層として挿入された。


図26 1977~1991年にベルギーで建設されたCRCPのリーンコンクリート路盤で細骨材のポンピングが発生
FHWA-PL-07-027,p.29

1977年にCRCP設計法が見直され、鉄筋比が0.67%に減少した。この設計法は、1991年まで続いた。鉄筋位置は、6cmから9cmに変更された。コンクリート版と貧配合コンクリート基盤の厚さは20cmのままであったが、アスファルト中間層は削除された。舗装全層厚の減少、鉄筋量の減少は、建設コストの低下に貢献した。

この設計法では、貧配合コンクリート基盤のエロージョン、縦目地に沿った水と細骨材のポンピング(図-26)、パンチアウトが発生した。1992年に、当時最新であったCRCP設計法の不足項目抽出を目的とした、大規模調査が行われた。

その結果、6cmアスファルト中間層が再び使用され、CRCP標準版厚が23cmに増え、鉄筋比も0.72%に増えた。1995年には、鉄筋比が0.76%に増加した。これは技術的な根拠に基づく変更ではなく、鉄筋の規格上による変更(18mmバーの撤廃)が理由である。他項目は変更されず、コンクリート版厚23cm、アスファルト中間層6cm、リーンコンクリート路盤20cmが今日のベルギーCRCP標準仕様となっている。重交通対象で設計寿命30年である。

同条件(重交通対象で設計寿命30年)のJPCPの設計方法では、コンクリート版厚25cm、アスファルト中間層6cm、リーンコンクリート路盤20cmである。JPCPおよびCRCPの両者において、設計寿命30年を優に越して、大規模修繕なしで40年以上の供用が可能である。

オランダ

1950年代、オランダの高速道路で敷設されたコンクリート舗装は、ダウエルバーを用いない目地有りJPCPであった。1960年代に入り、オランダでは目地有り鉄網無しコンクリート舗装における横目地は、ダウエルバーによる補強が慣例となった。オランダの高速道路において存するコンクリート舗装の約半数は目地有り鉄網無しコンクリート舗装である一方で、近年敷設された新しいコンクリート舗装のほとんどがCRCPである。

2005年以前、オランダでのコンクリート舗装工事は、材料および施工に関する仕様規定により履行されていた。2005年に性能規定への変化が生じ、前述したように、コンクリート舗装に関する工事契約に関する近年の趨勢は、完成後7年の保証期間を設けた設計・施工一括発注方式を採用することである。

オランダでは、コンクリート舗装の設計に関して「VENCON」と呼ばれる自動計算される設計ソフトが用いられている27, 28)。ただし、オランダにも舗装設計カタログが存在する。道路の機能分類および交通量区分毎に代表的な舗装断面やその他細目が「オランダにおけるセメントコンクリート舗装マニュアル―基本構造」に示されており、これを利用している29)

現地調査による測定値を基にし、予め設定された車軸種類別の分布割合が舗装設計ソフトで使用されている。適用されている総軸数は、前2軸・後1軸が39%、前1軸・後2軸が38%、ワイドベース1軸が23%の分布割合として想定されている。近い将来、スーパーワイドベース1軸を想定に取り入れ総軸数を決定する計画がある。軸重範囲(軸重の荷重分配割合)の初期値も道路区分毎にプログラム上想定されている。

目地有り鉄網無しコンクリート舗装は弾性ばね上の版モデル(k値により表現される弾性バネ)にしたがって設計される。コンクリート版内に生じる応力は、ウェスターガードが1948年に発表した公式に、ヴァン・コーヴラールの処理路盤を考慮した多層版モデルにより修正を加えたもので計算される。コンクリート版内の温度応力はアイゼマンの公式を用いて再計算される。載荷荷重の有効低減効果を計算するために、目地および路盤種類毎に設定されている代表的なたわみ・荷重伝達率の一覧表が用いられる。候補となる版厚における耐用年数を算定するために、疲労損傷蓄積モデルが用いられる。


図27 オランダにおけるコンクリート舗装の縦目地の配置詳細図
FHWA-PL-07-027,p.30

デルフト大学で開発された引張応力モデルが、CRCPにおける必要鋼材量を決定するために用いられる。CRCPでは一般的に30から40年の設計耐用年数が用いられている。一般的な設計断面は、CRC版25cm、表層のポーラスアスファルト5cm、路盤との縁を切るためのCRC版下のアスファルト系材料6cm、コンクリート塊、廃レンガ、および水硬性結合材を混合して造成された路盤25cmの構成であろう。これらの処理層は、少なくとも40cm以上の土質材料の路盤上に構築されているであろう。(凍上深さはオランダでは、帯水層上の最小路面高さほど問題とはならない。路盤底面は、記録に残っている帯水層の最高水位よりも少なくとも80cm以上高くなければならない。)30)延長方向の鋼材量は、25cm厚のCRC版の場合、0.70%であろう。図27に縦目地部の詳細を示す。

イギリス

1975年以前のイギリスでは、CRCPの建設には経験的設計が用いられていた。この手法では、ある特定の交通レベルまでは最小の版厚が使用され、その特定のレベルを超えると交通レベルに応じた版厚が要求される。要求される版厚は、コンクリート強度が40MPaという設定のもと算出され、より強度の高いコンクリートは採用されなかった。近年では、固定した強度ではなく、コンクリートの設計曲げ強度に基づく新しいCRCPの設計手法が開発されている。軸方向鋼材の鉄筋比は0.6%である。