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FHWA-PL-07-027
Long-Life Concrete Pavements in Europe and Canada
August 2007

報告書の原文

日本へ推奨される項目

本頁は、米国連邦道路管理局の報告書FHWA-PL-07-027 「Long-Life Concrete  Pavements in Europe and Canada」をセメント協会舗装技術専門委員会が和訳したものです。原文は、FHWAのホームページで公表されています。

第8章 「 キーとなる知見と推奨 」

長寿命コンクリート舗装の調査・検討から見出された「キーとなる知見」と「推奨」は以下の通りである。

「キーとなる知見」

舗装種別選定戦略

・長寿命コンクリート舗装

すべての国で、コンクリート舗装は長寿命と同義語と考えられており、25-30年以上の耐久性があると考えられている。

・国民と環境

市民は、騒音、交通渋滞、安全など環境問題に関心あり。特に騒音は、大きな環境問題になっている。訪問した国全てで、交通安全、騒音低減、交通渋滞緩和、再生利用について重要視されていた。ある国では、多基準分析プロセスを用いて、舗装種決定の要因を評価している。また、英国では、騒音低減のため、高速道路を全てアスファルト舗装にする、政治的判断もされた。

・PPPと革新的な契約

社会資本の維持と改良のため、ヨーロッパ各国およびカナダは、PPPなどの斬新な財政手法を採用している。政治家は、この財政手法の民間部門におけるリスクを分担の利点を認めている。訪問したEUの国の多くが、PPP手法が、国の負債を減らし、EU財政基準に合格できるようにするものと後押ししている。結果として、請負者は、設計、施工、道路の長期メンテナンスにより責任を持つようになっている。このような条件のもと、請負者は、コンクリート舗装が長寿命を有し、メンテナンスコストが小さくできるのでコンクリート舗装を採用する方向にある。もう一つ、見られた契約事情に関しては、低入札よりベストバリューに基づいた契約が重要視されている点である。

・舗装マネジメント

舗装マネジメントシステムを用いるかどうかは、EU各国で不統一のため、舗装種選択の原動力にはならない。

・舗装種別選定に関する要因

訪問した国や機関のほとんどが、LCCを考慮していると言っていたが、実際は、道路機能区分、交通量区分、初期コスト、環境問題などのほかの要因が舗装の種類の選択を決定するようである。ケベックでは、ネットワークのあるセグメントはコンクリート舗装にするといった政治的決断がされた。オーストリアでは、ある交通量レベル以上ではコンクリート舗装とするポリシがある。同様な方針はオランダにもある。

設計

・カタログ設計

ドイツとオーストリアは、舗装厚およびその他の構造を決めるのに、カタログを用いている。このカタログは、その国の長い経験を反映したものである。もちろん、力学モデル化、室内試験 および現場調査などによりそのカタログの断面の妥当性も検証している。オランダと英国では力学経験設計ソフトウェアを用いて、プロジェクトレベルの設計を行っている、ただし、この2か国のコンクリート舗装施工量は年に2-3マイルである。コンクリート版厚は、ドイツでもオーストリアでも同じである。この版厚は、同じような交通量で設計した米国の版厚よりも薄いようである。これら薄版厚でも、疲労ひび割れは生じてないようである。

・設計寿命

訪問した国のコンクリート舗装の設計寿命は、概ね最低30年である。オランダでは、一般道でも高速道路でも40年である。発注者は、供用寿命40-50年を確保するための現在の設計と施工法に満足している。

・交通管理

安全と交通混雑緩和の観点から、拡幅コンクリート路肩が設計に採用されている、これは米国の緊急路肩より広い。これらの路肩は本線と同じ版厚、同じ横断勾配である。

・拡幅したスラブ

拡幅路肩は、外側レーンに造られ、車両走行位置が、舗装縁部から離れることになり、発生応力を小さくし、舗装寿命を延ばす。走行車線の断面は、舗装の縁部で設計する。コンクリート版下の層が、舗装縦縁部より広げて施工される、これは排水と施工性確保のためである。

・タイバー

訪問したヨーロッパの国のタイバーの数は、米国の場合よりも少ないが、(およそ半分)、それによる問題は生じていない。

・JCP

普通コンクリート舗装を採用しているヨーロッパの国(ドイツ、ベルギー、オーストリア、オランダ)では、目地には直径25㎜のダウエルバーを用いており、目地段差が生じることなく、良好に供用している。これはたぶん、コンクリートの配合中の骨材の量が多いことと高品質のためであろう。ダウエルバーは通常20-30cm間隔で、厚い(そして一般的には安定処理した)路盤上にセットされる。

・CRCP

連続鉄筋コンクリート舗装版は、訪問した国では、重交通用、長寿命対応舗装と考えられている。ベルギー、英国は長い連続鉄筋コンクリート舗装版の歴史を有し、実際ベルギーの連続鉄筋コンクリート舗装版の設計と施工法は数年前に米国でも試みられた。英国では、斜め横鉄筋を用いた場合の、独特でかつ望ましくないひび割れ発生パターンを報告している。 縦方向鉄筋比は、国により異なっているが、ひび割れ幅が制御因子であることは同じである。訪問した国のどこも、エポキシ塗装鉄筋は用いてなかったが、カナダのケベック州では、亜鉛塗装鉄筋galvanized steelを用いていた。また、オランダでは、原則として、版厚は、普通コンクリート舗装の90%としており、これは、VENCON2.0ソフトウェアで確認さなれている。例えば、JCPで28cmと設計された場合、連続鉄筋コンクリート舗装版では25cmである。ベルギーでは、連続鉄筋コンクリート舗装の版厚は普通コンクリート舗装よりも2~3cm薄い。ドイツでは、まだ試験施工の段階ではあるが、実施した試験施工(A-5アウトバーンで1.5km延長)では版厚は24cmで、これも通常の普通コンクリート舗装よりも2~3cm薄い。この版厚の設計は、ミュンヘン工科大学の指導により行われた解析による。

・路盤

カナダでは高品質の骨材を用いた透水性路盤を用いていたが、ヨーロッパでは用いていなかった。幾つかの国では、密粒加熱AS処理路盤とセメント安定処理路盤を用いていた。ドイツ、ここでは、過去にはセメント安定処理路盤も用い、その上に付着させたコンクリート版を施工するものであったが、いまはコンクリート版とセメント安定処理路盤を、5㎜厚のジオテキスタイルか加熱アスファルト混合物で分離している。1986年からこの種の路盤構造を採用しているが、成功しているので、粒状路盤上にもこの路盤が採用できないか試みている。旧東ドイツのコンクリート舗装はASRにより大きく破損していたが、粒状路盤材料として再利用されうまくいっている。

施工

・目地のシール

視察した現場の状況から判断して、古い工事で、目地をシールしてもしなくても供用状態はよかった。しかしベルギーでは、シールしていない目地の長期供用性は、シールしたものと同じではなく、特に重交通路線ではそのように報告されている。オーストリアとドイツでは加熱型も成型タイプも使われている。オーストリアで緊急レーンの横目地の下に厚さ1.25cm、幅5~10cmの帯状排水施設を近年は設けている。ドイツでは幾つかの地方では縦収縮目地をシールしない状態にしていた、ただ縦目地から侵入した雨水が、シールした横目地の下に回ることから、今は実施していない。

・Foundation

凍上抑制のため厚い凍上抑制層が用いられる。この抑制層は透水性と安定性を有するが、透水型ではない。この層には、アスファルト、コンクリート、ときには建築物からの石などの再生材も用いられる。

・中間層

ドイツでは、コンクリートスラブとセメント処理ベース間のbond breaker として厚さ5mmのジオテキスタイルの使用を最近規定している。ドイツの技術者は、モルタルが施工中にジオテキスタイルを飽和させ、またbond breaker として作用しつつ支持力を与え、十分なスティフネスとなる。設計をbonded ベースよりなるものからジオテキスタイルによってスラブを分離したものに変えると、セメント処理ベースの場合では、必要な厚さが26cmから27cmに増加する。コンクリートスラブとセメント処理ベース間の代表的な中間層はHMAである。

・ジョイントレスな橋梁目地

オランダでは目地なし橋梁ジョイントの説明を受けた、これはまだ試験施工段階ではあるが、橋梁のアプローチにおける、低メンテナンスを実現する手法として、オランダでは関心が持たれている。しかし、この技術はコストがかかるとのこと。

材料

・水硬性材料

普通ポルトランドセメントおよび、スラグ、フライアッシュ入り混合セメントが用いられている。石灰石微粉末もポルトランドセメントでは5%まで混入が許されている。試験結果でASRの発生可能性がある場合は、低アルカリ型のセメントや混合セメントが使用される。多くの国では最小セメント量の規定がある。補足セメント系混和材はW/Cには算入しない。骨材露出工法を採用している国では、表面のペースト分が少ないような配合および締固め手法を用いている。

・骨材の規定

骨材選定、粒度に注意が払われ、特に2層施工の上層用には特段の注意をはらう。上層には高品質骨材が使える、ただし、輸入する場合もある。全ての国が、分級した骨材を用いていた、それはその層にもよるが3ないしは4サイズである。骨材最大寸法の典型的な大きさは20㎜である。2層施工の上層には8-11㎜の骨材を用いる。発注者エンドプロダクト規定を使用することで品質を管理する。

・リサイクリング

再生材は、多くの国で路盤材に用いられている。オーストリアでは2層施工の下層や、路盤に再生コンクリートおよび再生アスコンの使用を規定している。これらの混合物では、最大30%まで、再生アスコンの混入が許される。 PSVがヨーロッパでは規定されており、オーストリアでは2層施工の上層にはロサンゼルス損失量が20%以下のものを使う。

・腐食対策

ケベックでは、亜鉛メッキ鉄筋を使う。ドイツとオーストリアではタイバーは真ん中1/3を、ダウエルバーは全部をコートした鉄筋を使う。

・締固め管理

オーストリアでは、転圧にはインテリジェント締固め制御をしていた。訪問したヨーロッパの国は概して締固めに厳しく、ある国では締固めをチェックするため、粒状路盤上で平板載荷試験を行っていた。

・セメントとコンクリートの試験

コンクリート製造管理は、請負者の責任となっている。ワーカビリティは、ASTM Vebe試験に似た締固め試験で行っている。オンタリオ州とオーストリアは硬化後のコンクリートの空気量もチェックしている、ただしオーストリアでは空気量の問題が懸念されるときのみではある。訪問したヨーロッパ各国ではASRは良く管理されており、施工前試験で、可能性が発見されたら、混合セメントや低アルカリセメントを用いる。ASRを制御するのが困難とした国はどこもなかった。

・舗装の試験

訪問した国では、騒音に関する品質コントロール試験を行っていなかった。また統一した試験方法もない。テクスチュア測定は、エンドプロダクトと、舗装管理の両方のために実施されている。MIT-SCAN装置がドイツで開発され、ダウエルバーの設置の不整合を測定できるようになっている。これはカナダでは品質管理および品質保証の観点から仕様になっているが、他の国では使われてない。EU各国の平たん性4m直定規で測ることになっている。ベルギーではAPLという機械で縦断プロファイルも測定している。訪問したどの国の平たん性も良好であった。

維持

・維持技術

一般に、訪問した国の多くが、ほとんどメンテナンスの必要がなかった。目地の再シールをたまに実施する程度である。広く行われるメンテナンスの一つが薄層アスファルトオーバーレイである。これにより、スパイクタイヤによる摩耗の補修や、タイヤ路面騒音低減に用いる。カナダのみ、コンクリート舗装が表面に出ている状態の時、ダイヤモンドグラインディングを行っていた。英国では。騒音低減のため、コンクリートはアスファルトでオーバーレイされる。

・迅速補修用プレキャストスラブ

カナダでは米国で開発されたプレキャストコンクリート版技術を補修に適用すべく検討中である。訪問した試験施工箇所では、ミシガン法とフォートミラー法によるプレキャスト打換えが評価されていた。カナダではミシガン法の修正法も検討していた。これらの方法はいずれもカナダの載荷試験では破損を生じたが、これは主として設置に関わる問題であり、オンタリオ州は、この工法はこれから実用的工法になると信じている。

研究

・コンクリート舗装の研究

ヨーロッパではセメントとコンクリートに関連した多くの研究が、産学で実施されており、例えば、ドイツのVDZは空気連行に関する総合的研究やASRの研究をしている。

・ナノテクノロジー

セメント系材料に関するナノテクノロジーの共同研究がヨーロッパでは行われている(ナノセム)。このコンソーシアムは官と産の共同でなりたっており、後援はセメント業界とEUである。この研究は今後コンクリートの耐久性や力学特性の大きな改善をもたらすであろう。現在のナノセムの研究の焦点は、セメントの挙動、数年経たコンクリート特性の研究である。

産官学の体制

・請負者教育

訪問した国のほとんどでは、特別な教育はしてなかった。現場教育でほとんどすましている。しかし、多くの国が良く教育されたそして質の高い作業員を有している。また、セメント業界がある種のトレーニングをしている。

・教育認証

検査員や請負者の認証システムはない。トレーニングは、請負者の責任であり、義務ではない。ただ将来には、教育の必要な東ヨーロッパからの作業員も来るのでその懸念が示されていた。

・コミュニケーション

一般に、EU各国では、請負者、発注者、産業界によいコミュニケーションがあり、産学はお互いに尊重している。例えば、委員会は産官学で成り立ち、設計カタログを作っている。

・基準

ヨーロッパ規格は歴史的に長く、調和の結晶である。一方、各国もそれぞれの基準規格をもち、使用している。CENはヨーロッパ規格でありEUにより決められたものである。EU建設成果物Directiveは建設成果物が、所定目的に合致していることを要求する。これらの成果物が使われる現場ではCPD仕様を満足する必要がある。満足した成果物はCEスタンプが押される。セメントの場合、製造者が、生産物がCENの規格を満足すると主張しても、その判定は第3者の試験でおこなわれる。
 例えば、CEスタンプは以下の場合に役立つ、例えばセメントが施工の途中で無くなり、ほかの産地からいれなければならない場合である。CEN規格は舗装の材料にはまだ作られていない。ENや各国規格はまだ使われ続けるであろう。

「推奨」

以下の技術を米国に導入することは大変意義があり、導入を推奨する。

・2層仕上げ工法

オーストリア、ベルギー、オランダ、ドイツでは2層施工法を用いて、高い摩擦抵抗、低い騒音、骨材の有効利用、再生材の利用を調和させている。

この工法では、下層には品質の劣る新規骨材や再生骨材を用い、上層には高品質の骨材を用いたコンクリートを用いて、材料のコスト削減を行っている。2層施工法は米国の舗装業界にとっては新しいものではない。過去に多くの交通局が採用しており、そのときは鉄網を敷設し、鉄網圧入装置は許されてなかった。この20年、多くの州が再生促進の、表面性状向上のため2層施工の経験を積んでいる。

・カタログ設計

舗装カタログはヨーロッパではうまく使われてきた。米国では伝統的に、舗装設計はプロジェクト毎に行われてきた。この手法は、多年にわたり米国の舗装技術者の育成には役立ってきた。しかし、交通荷重や交通予測が年々困難になっており、プロジェクト毎の設計は必ずしも必要になっていない。加えて、材料の変化や開発があり、舗装構造の応答に及ぼす材料の影響を考慮できる可撓性のある設計が望まれている。このニーズから、MEPDGの開発につながったのである。

カタログ設計は、簡単な手法である。多くのヨーロッパの国では、一般に舗装カタログを用いて舗装断面を決定する。カタログを用いている国は、経験的な知見の概要は信頼できるものでなく、とかく過剰設計になりがちであることを認めている。カタログの設計断面や構造は、その国の材料、交通事情のものとの長い経験に基づくものである。これらの経験は、力学的原理を用いて専門家による解析で検証されている。専門家は、設計カタログの断面の検証のため、室内試験や現場追跡調査も行っている。また設計カタログも5年ごとに見直されている。

設計カタログの仕様は、統一性と簡素化の利点を有する。カタログ設計自体は設計手法ではなく、むしろ舗装解析に用いる適切舗装設計構造を特定する手段であるといえる。カタログ設計を開発するもっとも迅速な方法は、単純に、これまでの良好な供用を示してきた設計を導入することである。設計構造マトリックスは、カタログコンセプトのもうひとつの重要な部分であり、コスト、パフォーマンス、施工しやすさなどの情報を提供するものである。それでも、カタログで推奨される情報について、室内および現場で確認する必要がある。

・厚くて高品質な路床

ヨーロッパでは、コンクリート舗装の路盤に使われる粒状材料は一般に品質が米国のものより良い(粒度が良く、開粒ではないが排水が良く、細粒分がすくない)。訪問した国の骨材規格を調べた。ヨーロッパと米国を比較してみると、ヨーロッパには路床を改善する思想が見られる。ヨーロッパでは舗装版には使えない再生コンクリートを路盤に使うことは普通である。

再生材は、分級し、また粒度の一部にも使われている。セメント安定処理路盤もある国では多く使われてきた、その上にジオテキスタイルやアスコン層を分離層として用いてである。加えて、オーストリアではインテリジェント締固めをしていることを記録しておきたい。ドイツでは、締固めの確認に平板載荷試験機を用いている。

・コンクリートの配合設計における注意

曲げ強度は上層コンクリートでは7MPaであり、米国のものよりはるかに高い。 コンクリートに用いるセメント系材料には十分注意を払っていることは米国が見習うべき分野である。

・ジオテキスタイル中間層

最近ドイツで導入されたのが、セメント安定処理路盤上のジオテキスタイルである。これは厚層のジオテキスタイルがコンクリート版とセメント安定処理路盤の付着を防止しするものである。ジオテキスタイルは一般に米国でヨーロッパ使われているジオテキスタイルより厚いものである。このジオテキスタイルはポーラスであるので、コンクリートのフレッシュモルタルが浸透し、ジオテキスタイルがコンクリート版と力学的に付着する。一方で、路盤からの分離を果たす。このジオテキスタイルは米国の多くの州で使われているアスファルト中間層に代わりになるかもしれない。

・低騒音骨材露出路面

ヨーロッパでは交通騒音に関心が高い。その回答として、数カ国は、骨材露出工法を用いている。 ヨーロッパでは上層に良質な骨材を用いたコンクリートを施工し、表面の硬化を遅延させ洗い出す。そして低騒音とする。これは、その他摩擦係数がたかく長く持続する利点もある。しかし、騒音レベルに低減にはほかの特別な仕上げ法でも確保できそうである。