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FHWA-PL-07-027
Long-Life Concrete Pavements in Europe and Canada
August 2007

報告書の原文

日本へ推奨される項目

本頁は、米国連邦道路管理局の報告書FHWA-PL-07-027 「Long-Life Concrete  Pavements in Europe and Canada」をセメント協会舗装技術専門委員会が和訳したものです。原文は、FHWAのホームページで公表されています。

第5章 「 セメントとコンクリート 」

カナダ

オンタリオ州では、コンクリートの配合設計については請負業者が責任を負うことが求められている。必要圧縮強度は30MPa以上としている。粗骨材は最大呼び径37.5mmと19mmの混合したものを使用している。空気量は6.0±1.5%とする。セメントはポルトランドセメントであれば良いが、一部を補助材に置き換えることもできる。補助材は高炉スラグ微粉末(最大25%)、フライアッシュ(最大10%)、もしくは両者の混合物(フライアッシュが全セメント系材料の10質量%を超えられない場合を除き、最大25%)とすることができる。

ケベック州では、CRCPの配合設計に3成分系(ポルトランドセメント、高炉スラグおよびフライアッシュ)を使用することができる。混合セメントも、使用することができる。ただし、JPCPでは使用できない。必要圧縮強度は、CRCP、JPCPいずれも35MPaである。

ドイツ

ドイツは、2000年にコンクリート規格として欧州統一規格EN206-1を採用した。この規格は、ドイツの規格であるDIN 1045-2と共に、ドイツの新規格として構成されている。EN206はまだ、EUで法的地位を確立できておらず、フレームワークの定義のみを提供しているため、一部の地域では、国家規格で補充している。新しい規格の1つの特徴は、暴露クラスによる耐久性評価の重要性が増加していることにある。道路や橋のデッキは水分が多く、凍結防止剤も使用されており、最も厳しい暴露クラスXF4にあたる。ドイツの規格では、道路建設に使用するコンクリートの仕様として、水セメント比50%以下、強度クラスC30/37*、単位セメント量20lb/ft3(320kg/m3)以上、空気量4.0%以上と設定している。さらに、ドイツのガイドラインZTV BETON-STB2001やコンクリート舗装建設のためのその他のガイドラインでは、水セメント比45%以下、単位セメント量22lb/ft3(350kg/m3)(骨材露出工法用コンクリートでは単位セメント量26lb/ft3(420kg/m3))以上を設定している。

セメント規格であるEN197はコンクリート規格とほぼ同時期に採用された。これは、セメントを27タイプに区分し、セメント種類は、DIN1045-2で建築用途別に区分される。セメント、骨材、混和剤、練混ぜ水などは、これまでのところセメント規格であるEN197によって規定されている。

骨材は、欧州規格であるEN12620を満たす必要がある。道路建設ではビル建物や他の構造物の建設に比べて厳しい規格が採用される。規格値としては、凍結融解試験における質量減少、軽量有機不純物、形状や扁平率、すりへり減量(従来の表面仕上げでは50、骨材露出工法では53)、アルカリシリカ反応抑制ガイドラインの内容を含む。

また、ドイツの道路建設ではCEM Ⅰ 32.5R(ASTMタイプIに相当)を満足するポルトランドセメントが使用される22、43)。ただし、クライアントの同意があれば、CEM Ⅱ/A-2またはCEM Ⅱ/B-Sのポルトランドセメスラグセメント、CEM Ⅱ/A-TまたはCEM Ⅱ/B-Tのポルトランド焼成頁岩セメント、CEM Ⅱ/A-LLのポルトランド石灰石セメント、またはCEM Ⅲ/Aの高炉セメント(少なくとも42.5強度区分)を使用することができる。

セメントの比表面積は、最大で3500cm2/g、可使時間は少なくとも2時間以上でなければならない。1980年代には、アルカリ骨材反応に起因するひび割れが供用後5~10年のいくつかの舗装で発生しており、使用されたセメントのアルカリ量はNa2O換算で1.0~1.4%であった。その後、アルカリ量が1.0%未満のセメントが道路建設に使用されており、これらの舗装では、上述のようなひび割れは発生していない。現在のドイツの規格では、CEM Ⅰでセメントのアルカリ量を0.80%(Na2O換算)以下に制限している。

ドイツにはセメント製造工場が25箇所あり、コンクリート舗装業者は10社ある。コンクリート舗装業者は、配合設計責任を有しているものの、一般的にその配合に独占権はない(ただし、セメント製品には、独占権がある)。フライアッシュまたはフィラーは、コンクリートに使用されるが、フライアッシュとシリカフュームは同時に使用することはできない。補助的なセメント系材料は、セメント量または水セメント比の計算に考慮されない。

2層構造の舗装では、リサイクル材料または安価な砂利を下層で使用してよく、その場合、上層と下層では強度が異なる。なお、骨材のうち、35%以上は砕石を用いなければならない。高い耐凍害性と磨耗性も必要である。そのためドイツでは、いくつかの骨材をノルウェーから輸入し、舗装工事に使用している。

道路建設のために必要なコンクリートの強度区分はC30/37で、これは材齢60日におけるφ6in(φ150mm)円柱供試体の圧縮強度が4350psi(30MPa)以上、材齢28日における6in角柱供試体の圧縮強度が5400psi(37MPa)以上のコンクリートである。曲げ強度は舗装工事前にのみ認定試験で確認する。曲げ強度は、EN12390-5による4点試験(3等分点載荷試験)で材齢28日において650psi(4.5MPa)以上が必要である(DIN1048による3点試験での800psi(5.5MPa)と同等)。

オーストリア

コンクリート舗装用のセメント及びコンクリートのオーストリア仕様 (RVS 8S.06)では、凝結の始発時間が 68°F (20°C) で2時間以上、ブレーン粉末度 3,500 cm2/g 以下、材齢28日の立方体強度 が1,000 psi (7 MPa) 以上のヨーロッパ規格CEM IIセメントが必要である。

オーストリアのコンクリート舗装仕様 (RVS 8S.06.32) における、2リフト施工の下層コンクリートで使用されるコンクリート配合は、材齢28日の曲げ強度は800 psi(5.5 MPa)以上、 圧縮強度は5,000 psi(35 MPa)以上が必要である。上層コンクリートで使用される材料には、材齢28日の曲げ強度は1,000 psi (7 MPa)以上、圧縮強度は5,800 psi (40MPa)以上と設定されている。

コンクリート配合設計の責任は施工者にあり、そして施工者が契約する試験所は必要とする方法を用いて最適配合の検討を行う。施工者の配合は、特許製品としては認められない。

骨材露出工法のコンクリート表層に使われる骨材に必要な特性の1つとして、PSVの値が50以上であることが挙げられる。

下層コンクリートに使用される骨材は、古いコンクリート舗装やアスファルト舗装からのリサイクルが可能だが、アスファルト舗装からリサイクルされたものは骨材全体の10%以下と制限されている。古いコンクリート舗装がリサイクルされる際には、古い舗装の100%が回収、粉砕、等級分けされ、新しいコンクリート舗装やセメント安定処理路盤に再利用される。

オーストリアでは20%~25%のスラグを混合したポルトランドセメントが使用されている。下層コンクリートの単位セメント量は、セットフォーム舗装では20 lb/ft3(320 kg/m3)以上、スリップフォーム舗装では 22 lb/ft3 (350 kg/m3)以上である。

上層コンクリートの単位セメント量は、セットフォーム舗装では23 lb/ft3 (370 kg/m3)以上、スリップフォーム舗装では 25 lb/ft3 (400 kg/m3)以上、骨材露出工法では28 lb/ft3 (450 kg/m3)以上である。空気量は、セットフォーム工法では3.5%~5.5% 、スリップフォーム工法では4.0%~6.0%が必要とされている。

ベルギー


図40 ベルギーでの舗装用コンクリートの骨材粒度
FHWA-PL-07-027,p.38

ベルギーでは、コンクリート舗装に3タイプのコンクリート配合を使用している。セメントは、CEM I または42.5強度クラスのCEM III/Aが使用され、アルカリ骨材反応対策としてアルカリ量が制限されている。セメント量が多く、低水セメント比で空気連行剤を使用することで、より耐久性のあるいわゆる高強度コンクリートとしている。

ベルギーは、各地域の骨材によるアルカリ骨材反応の問題は生じておらず、アルカリ量が0.9%まで許容されている。空気連行剤は、10年前までは使用されていなかった。

図40に、ベルギーでコンクリート舗装に使用されている、最大粒径20mmと32mmの骨材の粒度分布を示す。

オランダ

オランダでは、特に規定されてはいないが、コンクリート舗装には、フライアッシュセメント(混入率30~35%、CEM Ⅱ/B-V 32.5R)やポルトランドセメントの使用が好まれている。また、スラグ混合セメント(上限が60%)も使用されている。

オランダでは、35/45クラス(円柱供試体:35N/mm2, 立方体供試体:45N/mm2)のコンクリートが舗装によく用いられる。 単位セメント量(下限:320kg/m3)と水を練混ぜ、空気連行されたコンクリートとし、水セメント比の上限は55%としている。 なお、オランダではアルカリシリカ反応の懸念が全くない。